“第36回文化財の保存および修復に関する国際研究集会 文化財の微生物劣化とその対策:屋外・屋内環境、および被災文化財の微生物劣化とその調査・対策に関する最近のトピック“ 開催報告

イタリアのピエロ・ティアノ博士による基調講演
ポスターセッションの様子

 微生物の繁殖は、屋外・屋内の環境を問わず、文化財にとっての大きな劣化要因となっています。東日本大震災における経験は私たちの記憶に新しいところですが、とくに地震・津波などによって被災した文化財については水濡れの影響から、微生物劣化が短期間のうちにおきやすく、その状況をみきわめるための調査と対策がきわめて重要となっています。そこで、保存修復科学センターでは、当研究所が各部門の持ち回りで毎年開催している“文化財の保存および修復に関する国際研究集会”の第36回目として、2012年12月5日(水)~12月7日(金)に、東京国立博物館・平成館・大講堂にて標記のシンポジウムを担当・実施しました。初日には外国専門家の基調講演に続き、被災文化財の生物劣化についてのセッション、2日目には屋外の石造文化財、木質文化財の生物劣化に関するセッション、そして最終日には屋内環境にある文化財の生物劣化の調査法や劣化の環境要因に関わるセッションを行いました。3日間を通じて合計15件の招待講演のほかに、国内外から23件のポスター発表があり、232名の参加者(のべ参加者数421名)を得て、活発な議論が行われました。今回は、イタリア、フランス、ドイツ、カナダ、中国、韓国など、海外からも多くの専門家が来日参加しました。今回のように、文化財の微生物劣化に特化したテーマでのシンポジウムは国際的にみてもほとんどなく、ヨーロッパ地域からも含めて自費で参加して下さった専門家が多かったものと思われ、まさに国際研究集会と呼ぶのにふさわしい、充実した情報交換ができました。終始、積極的にご協力いただいた発表者、参加者の方々に心より感謝致します。

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