平等院鳳凰堂日想観図扉絵の調査

日想観図の調査(尾廊より)

 平等院鳳凰堂は、天喜元年(1053)に成ったあまりにも著名な建造物ですが、その扉や柱の絵も日本絵画史に残るきわめて貴重なものです。このうち本尊・阿弥陀如来像の裏側にあたる、中堂西面から尾廊への出入り口に設けられた二枚の扉には、『観無量寿経』に説かれている日想観の絵が描かれています。剥落も多く、いくらか後世の補筆が入っているとはいえ、図様の主要な部分には創建当初のものを残す重要な作品です。
 この左扉下部には閂(かんぬき)を敷居の穴に落としこんで施錠する落とし錠があり、これを支える木製の部材が「エ」字形にとりつけられ、絵のある部分を隠していました。この度、鳳凰堂の修理工事にともなってこの部材が取り外され、隠された部分が現れたのを機に、平等院からの委託によって、この部分を中心として光学調査を行いました。調査は9月4~6日の3日間で、保存修復科学センター・早川泰弘、企画情報部・城野誠治、小林達朗が行いました。
 落とし錠の下に残された当初部分と思われる絵具は多くはありませんでしたが、いくらかの痕跡が残っており、これに対して早川が蛍光X線分析調査を、城野が高精細可視画像・反射近赤外線画像・蛍光画像の撮影を主として行いました。得られたデータについては、早い時期に分析、検討し、公表する予定です。

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