無形文化遺産保護条約第4回締約国総会

無形文化遺産保護条約第4回締約国総会

 無形文化遺産保護条約第4回締約国総会は、去る6月4日から8日まで、パリのユネスコ本部において開催され、東京文化財研究所からは、無形文化遺産部の宮田繁幸が参加しました。今回の会合では、運用指示書の改訂が主要議題であり、今までの総会以上に参加各国の活発な議論が行われました。従来の総会は、政府間委員会の決定を承認するという役割が強く、実質的な議論の場と言うよりは形式的な承認の場といった性格が強かったのですが、今回は政府間委員会に劣らない議論の場となりました。特に激しい議論となったのは、代表一覧表の審査方法に関する議論で、政府間委員会からの勧告で盛り込まれた、審査担当を従来の補助機関から、緊急保護一覧表と同様に専門家により構成される諮問機関へ移すことの是非をめぐって激しい議論が行われました。結果としては、政府間委員会の勧告は修正され、従来の補助機関による審査方式が継続することになりましたが、一方で長らく懸案であった年間の審査件数の制限(シーリング)が正式に運用指示書に記載されるなど、今後の条約実施に大きな影響を与える決定が行われました。
 本来締約国総会は条約上最高意思決定機関であることは変わらないのですが、今回のように政府間委員会の勧告が明確に覆された例はなく、今後条約の運用に課題を残す結果となったともいえます。また地域グループ毎の意見の対立が表面化したことも、今後注視し続けなければならない点でしょう。総会がこのような実質的討議の場として重きを増してきた以上、今後ともその動向把握に注意する必要があると考えます。 

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