『妙法寺蔵 与謝蕪村筆 寒山拾得図 共同研究報告書』の刊行

報告書表紙

 東京文化財研究所では、令和3年度より、香川県丸亀市にある妙法寺と共同で、妙法寺に所蔵される与謝蕪村筆「寒山拾得図襖」(重要文化財)の損傷部分について、当研究所が昭和34(1959)年に撮影したモノクロフィルムと現代の画像形成技術を合成し、復原する調査研究をおこなってきました(令和3(2021)年8月の活動報告https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/910046.htmlを参照)。その研究成果の一つとして、令和4(2022)年11月には、復原した襖を妙法寺の本堂に奉安したところです(令和4(2022)年11月の活動報告https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/1018231.htmlを参照)。
 こうした復原襖の制作や奉安の成果を中心に据えつつ、妙法寺の蕪村作品における過去の二度にわたる修理の経緯や知見とともに、当研究所が長年蓄積してきた写真資料やアーカイブの活用の可能性を提示し、豊富な画像を収載した共同研究報告書として刊行しました。
 同報告書には、「失われた寒山拾得蔵をもとめて―文化財アーカイブの奇跡」(文化財情報資料部長・江村知子)や「与謝蕪村筆「寒山拾得図(妙法寺蔵)再考」(同部広領域研究室長・安永拓世)の二本の論考とともに、「寒山拾得図」の①カラー画像、②近赤外線画像、③昭和34(1959)年撮影の4×5インチモノクロネガ写真画像、④画像形成技術で合成した復原画像、が掲載されています。また、妙法寺に所蔵される蕪村作品の「蘇鉄図」と「山水図(4点)」についてはカラー画像と近赤外線画像が、「竹図」と「寿老人図」についてはカラー画像が掲載されているほか、各作品には詳細な解説が付されており、妙法寺に残されている全ての蕪村作品を網羅した内容です。
 妙法寺の蕪村作品は、蕪村の讃岐時代を代表する基準として全て重要文化財に指定されていますが、これまで、妙法寺の全蕪村作品の画像が詳細に公開されたことはなく、本報告書は、妙法寺に奉安された復原襖とともに、今後の蕪村研究にとって不可欠なものとなるでしょう。
 同報告書は、全国の主要な博物館・美術館・図書館・大学等に寄贈しましたので、ご興味のある方は、近隣の図書館などで閲覧していただければ幸いです。

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