丸亀・妙法寺における与謝蕪村作品の調査・撮影

損傷のある寒山図襖
調査の様子
撮影の様子

 香川県丸亀市にある妙法寺は、江戸時代の画家で俳諧師でもあった与謝蕪村(1716~83)が明和5(1768)年に訪れて、多くの絵画作品を残したことで知られる寺院です。その妙法寺で蕪村が描いた「寒山拾得図襖」(重要文化財)は、現状では寒山の顔の一部が損傷し、失われています。しかし、近年、東京文化財研究所が昭和34(1959)年に妙法寺で撮影したモノクロフィルムに、損傷前の状態が写されていたことがわかり、当初の図様が判明したのです。
 そこで、東京文化財研究所では、この古いモノクロフィルムと、新たに撮影する画像を用いて、損傷した襖絵をデジタル画像で復原するという調査研究を、妙法寺と共同でおこなうこととなりました。
 令和3(2021)年8月24日から28日にかけて、新型コロナウイルスへの十分な感染対策を講じたうえで、この共同研究の調査・撮影のため、城野誠治・江村知子・安永拓世・米沢玲(以上、文化財情報資料部)の4名で妙法寺を訪れました。調査の対象となったのは、「寒山拾得図襖」「蘇鉄図屛風」「山水図屛風」「竹図」「寿老人図」(いずれも蕪村筆)です。全作品ともカラー画像を撮影し、「寒山拾得図襖」「蘇鉄図屛風」「山水図屛風」については赤外線画像も撮影しました。また、「寒山拾得図襖」の復原画像は、最終的に襖に仕立てて本堂に奉安するため、建具制作や文化財修理の専門業者による採寸もおこなわれました。
 モノクロフィルムでしか図様がわからない部分を、いかにカラー変換するかなど課題もありますが、この復原を通して、東京文化財研究所が蓄積してきた画像資料の新たな活用法を探りたいと思います。

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