イタリアにおける震災復興活動に関する調査

収蔵中の被災文化財
応急処置の様子

 東京文化財研究所では、平成29(2017)年よりトルコ共和国において文化財の保存管理体制改善に向けた協力事業を続けてきました。令和5(2023)年2月6日、トルコ南東部を震源とする地震が発生し、同国及びシリア・アラブ共和国を中心に甚大な被害が発生し、文化遺産の保存状態にも影響が出ています。当面は人道支援を優先すべきでしょうが、近い将来、文化財の保存修復分野においても国際的な支援が必要とされることが予測されます。
 一方、中部イタリアでは、1997年、2009年、2016年と立て続けに大地震が発生し、被災した文化遺産の復興活動が今なお続けられています。同様の文化遺産を有するトルコやシリアへの今後の支援検討に活かすとともに、今後起こりうる不測の事態にどう対処すべきかを学ぶため、令和5(2023)年2月13日から16日にかけてマルケ州とウンブリア州で調査を実施しました。スポレート市に所在するサント・キオード美術品収蔵庫は、自然災害発生時の文化財の避難先、また、応急処置を行うための場として1997年の震災後に建設された施設です。現在も約7000点に及ぶ被災文化財が収蔵され、国家資格をもつ保存修復士によって応急処置が進められていました。
 イタリアでは、度重なる経験を経て、被災直後のレスキュー活動からその後の対処に至るまでの組織体制や手順が整えられてきました。こうした文化財分野に係る震災からの復旧・復興活動において先進的な取組みを続ける国から学ぶべきことは多くあります。さらに調査を続けながら、今後の活動に役立てていきたいと思います。

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