ルクソール(エジプト)での壁画及び考古遺物保存に係る共同研究に向けた事前調査

岩窟墓壁画保存修復作業現場での調査
現地保存に係る保存修復事例の調査(ハトホル神殿)

 ルクソールは、古代エジプト史の時代区分における新王国時代に首都テーベがおかれていた場所であり、トトメス1世やツタンカーメンなど歴代の王が眠る王家の谷やカルナック神殿をはじめ数多くの葬祭殿が残されています。これらの遺跡群は、消滅した文明を今に伝える重要な痕跡であることなどが評価され、「古代都市テーベとその墓地遺跡」として1979年に世界遺産に登録されました。ナポレオンによる1798年のエジプト遠征に端を発して大きく飛躍することとなったエジプト文明に係る研究は、現在も国際的な規模で進められており、毎年興味深い発表や報告が続いています。ルクソールも例外ではなく、各所で盛んに発掘調査が進められ、新たな遺跡や遺物の発見があとを絶ちません。
 これに伴い問題となっているのが、考古学調査後の保存と活用についてです。近年では、発掘調査で発見された遺跡や遺物を地域の観光振興等に活用すべく、文化財として整備・処置することが義務付けられるようになりました。しかし、時間と予算の制約の中で応急的に行われた不適切な処置によって、却って対象物を傷めてしまう事例が少なくありません。
 こうした問題の改善に向けた支援の可能性を探るため、令和4(2022)年12月12日から24日にかけて、ルクソール博物館及びルクソール西岸岩窟墓群を対象にした実地調査を行いました。その結果、博物館に収蔵された考古遺物の保存管理に係る処置方法や、現地保存を前提とした岩窟墓壁画の保存修復方法の検討について、現地専門家より協力が求められました。今後、緊急性の高い研究テーマを絞り込むための調査を継続し、国際協働事業に繋げていくことを目指します。

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