言葉を紡ぐ版画家、清宮質文―令和6年度第13回文化財情報資料部研究会の開催

研究会の様子

 清宮質文(1917~1991)は、静謐で詩的な心象世界を木版画やガラス絵で表現した作家として知られています。昨年、当研究所は清宮が遺した手記・日記および写真等の資料をご遺族より受贈いたしました。
清宮質文資料の受贈 :: 東文研アーカイブデータベース
そして3月6日の文化財情報資料部研究会では、長年にわたり清宮を研究対象とし、資料の受贈にあたって仲介の労をとられた住田常生氏(高崎市美術館主任学芸員)に、「「清宮質文資料」について」の題でご発表いただきました。清宮は、作品制作に深く関わる多くの言葉を、「雑感録」「雑記帖」と題する手記の内に残しています。みずから「表現形式に「絵」という方法をとっている詩人」(「雑記帖」1971-72年)と記した清宮にとって、絵と言葉が分かちがたく結びついていることを示した住田氏の発表は、受贈した資料の重要性をあらためて認識させるものでした。
 発表後のディスカッションでは、住田氏とともに清宮質文資料の整理に当たられた井野功一氏(茨城県近代美術館美術課長)に、コメンテーターとしてご参加いただきました。当研究所が受贈したのは手記・日記や写真等の紙資料に限られますが、他に遺された資料として版木の類があり、井野氏はその保存・活用に向けての課題についてご報告いただきました。ディスカッションでは、原版も含めた版画家特有の資料群のあり方をめぐって、当研究所のスタッフも交え、意見が交わされました。

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