雅楽上演を多角的に捉える:実験収録の実施

舞楽《萬歳楽》収録の様子
舞楽《陵王》収録の様子

 令和6(2024)年9月30日と10月1日に、雅楽の実演について、視聴覚データ・生理学データ(呼吸等)・モーションキャプチャデータを同時計測する実験収録を行いました。これは、無形文化遺産部研究員・鎌田紗弓が研究代表者を務める「楽と舞:雅楽実践の身体コミュニケーション」プロジェクトの一環であり、東京文化財研究所・東京大学・桜美林大学・神戸大学・理化学研究所・ダラム大学の共同研究として、三島海雲記念財団 2024年度学術研究奨励金の助成を受けたものです。
 伝統芸能では、役割の異なる演者同士で見計らって表現を「合わせる」ことがよくありますが、これは決して「機械的に揃える」ことを意味しません。その微妙な調整がどのように行われるのかを探るため、収録の主な目的は、(1)呼吸や細かな動きなど映像・音声だけでは捉えきれない要素も含めて記録すること、(2)楽人・舞人の役割を担う際に何を意識しているのかという演者ご自身の意識・感覚について洞察を得ることとしました。2日間を通して、計13名の演奏家の協力のもと、《萬歳楽》と《陵王》の舞楽・管絃での上演を収録しています。
 今後は、得られた量的データ(視聴覚記録、生理学的記録、モーションキャプチャ)と質的データ(インタビュー)を、演奏者間の相互作用という観点から詳細に分析していきます。研究は始まったばかりですが、将来的な成果を、多様化する伝統芸能の記録作成手法そのものの検証にも繋げられればと考えています。

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