ブータン内務文化省文化局との合同調査会「ブータン中部及び東部地域の伝統的民家の成立背景と建築的特徴」の開催

座談会でのプブ・ツェリン氏による講話の様子

 東京文化財研究所ではブータン王国内務文化省文化局(DoC)が進める民家建築の保存活用に対する技術的な支援や人材育成の協力に取り組んでいます。令和元年度からは文化庁の文化遺産国際協力拠点交流事業を受託し、DoC遺産保存課(DCHS)との共同調査、また修復や改修を担う現地の人々に対する実習を中心に計画してきましたが、新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延によって現地への渡航が困難となり、令和2年度以降は行政用の参考書や学校用教材の作成など遠隔での実施が可能な内容に振り替えざるをえなくなりました。令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の収束を期待して、共同調査を行う準備を整えていましたが、残念ながら実現には至らず、代替措置として令和4(2022)年3月7日、DoCとの合同調査会をオンラインで開催しました。
 会議には、当研究所の事業担当者と協力専門家、DoCの事業担当者ら総勢22名が出席し、ブータン側から共同調査実施の前段階に共有すべき情報として、DCHS主任エンジニアのペマ氏が居住形態に注目したブータン中部及び東部地域の文化的・地域的特性について、また、DCHSアーキテクトのペマ・ワンチュク氏が同地域での民家建築調査の実施に向けた準備状況について発表しました。日本側からはブータンの歴史的建造物の耐震対策について現地で実証的な研究を続けている名古屋市立大学の青木孝義教授が同地域に多い石積造建築物の構造特性とその保存方法と課題について発表し、各発表での出席者からの積極的な質疑もあって、共同調査チームとしての知識の共有を図ることができました。あわせて、ブータンでの調査研究活動を行っている当研究所の久保田裕道無形民俗文化財研究室長とその協力者であるブータン東部タシガン県メラ出身のプブ・ツェリン氏による現地の日常生活や民間伝承に関する座談会形式の講話を行い、同地域に対する風俗的な観点から日本側出席者の基礎的な理解を深めることができました。
 未だに新型コロナウイルス感染症の収束が見通せないなか、文化遺産国際協力拠点交流事業は図書類の制作をもって一つの区切りとしましたが、DCHSとの民家建築の共同調査は、ブータンとの往来の制限がなくなり次第、速やかに実施に移したいと考えています。

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