第3回保存環境調査・管理に関する講習会―空気清浄化のための化学物質吸着剤―の開催

講習会の様子

 保存環境調査・管理に関する講習会は博物館・美術館等で資料保存を専門に担当している学芸員や文化財保存に関わる研究者を対象に、保存環境の調査、評価方法、環境改善や安全な保管のための資材・用具等に関して、共通理解を得ることを目的に年1回開催しています。第1回、第2回は文化財活用センター主催で実施され、第3回は文化財活用センターと当研究所の共同開催となりました。
 第1回目は「北川式検知管による空気環境調査と評価」と題して、ミュージアムの展示・収蔵空間の気中化学物質の定量分析に広く使用されるようになった北川式検知管について、使用方法、適切な評価法等などが解説されました。第2回目は「資料保存用資材としての中性紙」と題して、収蔵庫や書庫における資料保存容器の資材として広く使われている中性紙について、紙の科学的な性質、中性紙の特性や規格、中性紙を使用した保管容器の適切な使用方法などに関して、実習も交えながら解説されました。
 第3回目となる今回は化学物質吸着剤をテーマとしました。近年、建材や内装材を発生源とする化学物質の放散と、資料への影響に対する懸念、改善への関心が高まっていますが、展示・収蔵空間でどのように空気清浄化をしたらよいか、まだ模索段階にあります。そこで、化学物質吸着剤を開発している企業に、適切な化学物質吸着剤の選択と効果的な使用に不可欠な、吸着現象、吸着剤の原理や構造、吸着効率に関わる環境要因等についてお話しいただきました。
 新型コロナウイルス感染症の対策として、会場での対面の参加は8名、同時にオンライン配信も行い、合計30名の方に参加いただきました。参加した方々からは、「ガス吸着の種類、メカニズムがよく理解できた」「ガス吸着の原理、測定方法の理解で、問題点の解決方法の想定がしやすくなった」など原理から実践まで学べて非常に勉強になったとの意見をいただき、有意義なものとなったことがうかがえました。
 今後も保存科学的な観点から、実践に必要な内容のテーマを設定し、講習会を実施していく予定です。

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