世界遺産条約の履行に関する最近の国内外の動向―第6回文化財情報資料部研究会の開催

研究会のまとめ

 世界遺産条約を日本が批准して30年近くが経ちました。令和3(2021)年には「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」「北海道・北東北の縄文遺跡群」が加わり、日本の世界遺産は現在25件を数えます。令和3(2021)年11月30日の第6回文化財情報資料部研究会では、二神葉子(文化財情報資料部文化財情報研究室長)が、世界遺産の推薦や決定、保護といった、世界遺産条約に基づく最近の国内外での活動について報告しました。
 令和3(2021)年7月に中国・福州及びオンラインで開催された拡大第44回世界遺産委員会では、諮問機関に世界遺産一覧表への記載を勧告されなかった推薦資産の多くが、世界遺産委員会で記載を決議されました。例えば、ハンガリーなどが推薦した「ローマ帝国の国境線:ドナウリメス(西側部分)」は、ハンガリーの脱退で世界遺産委員会直前に資産範囲が大きく変わり、文化遺産の諮問機関であるICOMOSが評価不能としたものの記載が決議されています。ただ、この推薦に関しては、ICOMOSが過去に実施したテーマ別研究の結果と、推薦を受けてICOMOSが行った現地調査に基づく勧告の内容とに齟齬があり、勧告への対応について関係締約国間の調整がつかなかったことがハンガリーから指摘されており、ICOMOSに対する委員国の反発を生んだ可能性もあります。拡大第44回世界遺産委員会に関して、このような世界遺産一覧表への記載推薦に関する問題とともに、推薦書の予備的審査などの改善策も導入されたことを報告しました。
 世界遺産委員会の動きとは別に、国内では令和2(2020)年から、文化審議会世界文化遺産部会による日本の世界遺産の推薦や保護の在り方に関する検討が行われています。この検討内容についても、ウェブ公開されている資料に基づき報告を行いました。
 研究会では、国内における世界遺産推薦や保護に関する活動の課題を中心に議論が行われ、広範な関連情報発信の必要性も感じられる機会となりました。

to page top