酒呑童子絵巻についての発表—第2回文化財情報資料部研究会の開催
発表の様子
住吉廣行「酒呑童子絵巻」第6巻部分(ライプツィヒ民族学博物館蔵)
むかし大江山もしくは伊吹山に棲み、都で女性や財宝を略奪する悪業をはたらいていた酒呑童子という鬼が、源頼光ら武士によって征伐される物語を描く酒呑童子絵巻は、人気のある画題で数々の作品が残されています。有名な作品としては、サントリー美術館に所蔵される、狩野元信による3巻の絵巻物がよく知られています。今回の研究会では、「新出の住吉廣行筆「酒呑童子絵巻」(ライプツィヒ民族学博物館蔵)について」と題して、発表を行いました。この作品は6巻で構成され、明治15年(1882)に明治政府のお雇い外国人医師のショイベがドイツ帰国の際に持ち帰ったのち、全くその存在が知られていなかったものです。発表者は令和元(2019)年にライプツィヒにてこの作品を調査することができ、今回の発表では、この作品が徳川家第10代将軍・家治の養女であった種姫(1765〜94、実父は田安徳川家宗武、実兄は松平定信)が、紀州徳川家第10代藩主・治宝(1771〜1853)に嫁いだ際の嫁入り道具として天明6年(1786)に住吉廣行によって描かれた可能性があることを指摘しました。この作品の構成としては、狩野元信の3巻本の内容に前半が加えられているもので、今後の酒呑童子絵巻の研究において重要な作例と言えます。今後さらに研究を進め、研究資料として活用していくことを目指していきます。