東北歴史博物館における「文化財の記録作成とデータベース化に関するハンズオン・セミナー「文化財写真入門―文化財の記録としての写真撮影実践講座」」の開催

イシャリ撮影時の留意点の解説
注口土器の撮影実習
縞帳の撮影実習

 文化財の記録作成(ドキュメンテーション)は、文化財の調査研究や保護、さらには活用を行う上で必要な情報を取得する行為です。特に、写真からは、文字のみでは伝えきれない詳細な情報を読み取ることができ、適切な撮影条件を設定することで、より多くの情報の記録が可能です。
 このような文化財の記録としての写真撮影の実務について、令和3(2021)年3月12日に東北歴史博物館(宮城県多賀城市)において、宮城県博物館等連絡協議会加盟館を対象に、標記のセミナーを開催しました。セミナーは東京文化財研究所、東北歴史博物館及び宮城県博物館等連絡協議会の共催で、同協議会の令和2年度第2回研修会でもあります。開催にあたっては、マスクの着用、参加者間の距離の確保、換気など、新型コロナウイルス感染防止対策が取られました。
 当日は午前中の講義に続き、午後は縄文時代晩期の注口土器、伝統的なタコ釣りの仕掛けであるイシャリ、縞帳(縞模様の着物地の見本帳)など、東北歴史博物館の収蔵品を用いた撮影実習を行い、当研究所専門職員の城野誠治が講師を務めました。実習の参加者の皆様にはカメラを持参いただき、ライトやレフ板などの機材は館にお借りしました。実習で特に強調したのは、光の扱いの重要性です。館の方が手作りしたレフ板にライトを当て、反射させた光で被写体を照らし、観察を妨げる濃い影を消す手法など、いずれも既存の、あるいは安価な機材で実現できるものでした。参加者の皆様は熱心に実習に取り組まれ、学んだことを同僚にも伝えたい、業務で使ってみたいとのご意見を多くいただきました。
 多くの有益な示唆を与えてくださった共催機関の皆様、参加者の皆様に深く感謝いたしますとともに、今回の経験を生かしてセミナーを開催していきたいと考えています。

to page top