「斎藤たま 民俗調査カード集成」の公開

 無形文化遺産部では、2月1日より「斎藤たま 民俗調査カード集成」の公開をはじめました。本データベースは、民俗学者 斎藤たま氏(1936~2017)が作成した調査カードをアーカイブしたものです。https://www.tobunken.go.jp/materials/saito-tama
 たま氏は1970年代から日本全国の野辺歩きをはじめ、現在わかっているだけでも北海道から沖縄まで2500を超える地域を訪ねて民俗調査を行ってきました。その調査対象は植物、動物、まじない、遊び、言葉、年中行事、人生儀礼など多ジャンルに及び、聞き取り内容を整理した調査カードは総数およそ4万7千枚に及びます。いずれも暮らしに身近で、ややもすると見逃しがちな民俗を対象にしているのが特徴であり、現在では失われてしまった民俗事例も数多くあります。
 これらのカードは、たま氏の書籍を数多く刊行している論創社に預けられていたもので、たま氏の研究をされてきた民俗学者・岩城こよみ氏の仲介により、2017年に東京文化財研究所でお預かりすることになりました(詳しい経緯については 狩野萌2018「〔資料紹介〕斎藤たまの調査カード」『無形文化遺産研究報告12』を参照)。
 無形文化遺産部ではこの貴重な仕事を後世の私たちが十全に活用できるようにするため、カード画像の閲覧や、キーワードや分類、地名による検索ができるシステム作りを進めてきましたが、このたび、ご遺族のご厚意により、その成果の一部を公開することが叶いました。カードの整理作業は現在も続けており、毎月15日頃を目途に順次、内容を追加・更新していく予定です。
 調査カードに記されたひとつひとつの情報は些細で小さなものにすぎません。しかし、それが集積された時に見えてくる世界はきわめて豊かです。このアーカイブの公開により、たま氏の功績にふたたび光があたるとともに、豊かな民俗世界の実態について、さらなる理解が深まることを期待したいと思います。

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