第13回無形文化遺産部公開学術講座の開催

公開学術講座の様子

 令和2(2020)年2月6日(木)、第13回東京文化財研究所無形文化遺産部公開学術講座「染織技術を支える草津のわざ 青花紙―花からつくる青色―」を開催しました。
 午前中には特別上映会として文化庁工芸技術記録映画『友禅―森口華弘のわざ―』(昭和63〈1988〉年、桜映画社)や、平成11(1999)年に草津市で制作された『草津市の花 青花 伝承の青花紙』を上映し、青花紙についてのこれまでの記録を辿りました。
 午後からは平成28~29年度にかけて滋賀県草津市と東京文化財研究所で実施した青花紙製作技術の共同調査の成果を中心に講座を開催しました。共同調査については共同調査報告書を刊行しています(https://www.tobunken.go.jp/materials/katudo/817166.html 2019年、4月活動報告)。
 講座では趣旨説明後、本共同研究で撮影・編集した『青花紙製作技術の記録工程』(平成30〈2018〉年制作:東京文化財研究所)の記録映像を上映しました。その後、菊池からは「青花紙利用の現状―染織技術者への聞き取り調査を通じて―」について青花紙と代替材料である合成青花の双方が両方利用されている調査結果を報告しました。次に、草津市立草津宿街道交流館の岡田裕美氏からは、「草津市と青花紙―青花紙製作技術の保護に向けてー」と題して、共同調査で得られた草津市と青花紙製作技術の関係性の報告に加えて、現状についての報告がありました。共同調査から2年が経ち、3軒あった青花紙を製作する農家をとりまく状況は変わっています。現在では、草津市でも担い手セミナーを実施することで技術の伝承を行っています。現在の取り組みについての報告は、地域文化としての青花紙をどのように考えていくか、保護はどのように行っていくべきかという課題を浮き彫りとしました。その後、東京文化財研究所の石村智室長より「文化遺産としての青花紙」と題してこのような材料を製作する技術をどのように文化財保護に位置付けて考えていくのかについて報告がありました。
 共同研究成果の報告後、本公開講座は木版摺更紗の重要無形文化財保持者である鈴田滋人氏をお招きして「〈座談会〉染織材料としての青花紙」を設けました。青花紙は、友禅染や絞染の下絵の材料のイメージがありますが、鈴田氏の木版摺更紗の作品制作においても重要な工程を担う材料であることも改めて感じる機会となりました。 
 青花紙の技術伝承は、節目を迎えています。無形文化の保護は変容とどのように折り合いをつけていくのかを常に考えていかなければなりません。今後も利用できる材料であるかという課題に直面している現状について参加者の方にも知ってもらえる良い機会となりました。

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