アルメニア共和国における染織文化遺産保存修復研修の開催

天然染料を用いた染色の実験
エチミアジン大聖堂付属博物館所蔵資料の分析
修了式の様子

 令和元(2019)年10月7日から17日の間、アルメニア共和国において、同国教育科学文化スポーツ省と共同で染織文化遺産保存修復研修を開催しました。本研修は、平成26(2014)年に東京文化財研究所と同国文化省(当時)が締結した、文化遺産保護分野における協力に関する合意に基づくもので、平成29(2017)年度から通算で3回目の実施となります。
 今回の研修は、これまでと同様に佐賀大学芸術地域デザイン学部の石井美恵准教授と刺繍専門家の横山翠氏を講師として、歴史文化遺産科学研究センターとエチミアジン大聖堂付属博物館の2会場で行い、アルメニア国内の博物館や美術館など7機関から14名が参加しました。歴史文化遺産科学研究センターでは、藍やアカネなどの天然染料を用いた絹布や綿布の染色を行い、実際の染織文化遺産に用いられている染料を特定するための標準試料を作成しました。そして、エチミアジン大聖堂付属博物館では同館の所蔵資料を用いて技法の分析を行いました。
 最終日の修了式では、東京文化財研究所所長の齊藤孝正から、研修生一人一人に修了証書が授与されました。3年にわたって実施してきた研修事業は今回をもって終了となりますが、これまで学んだ内容をもとに、アルメニアの人々が自らの手で文化遺産の保存修復を行うだけでなく、その技術や知識を次の世代へ継承してくれることを願っています。

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