国際研修「紙の保存と修復」2019の開催

実習の様子

 令和元年(2019)年9月9日から27日にかけて、国際研修「紙の保存と修復」を開催しました。本研修は東京文化財研究所とICCROM(文化財保存修復研究国際センター)の共催で平成4(1992)年より開催しており、海外からの参加者へ日本の紙本文化財の保存と修復に関する知識や技術を伝えることを通じて、各国における文化財の保護に貢献することを目指しています。本年は33カ国71名の応募の中から選ばれた10か国(アイルランド、アメリカ、イギリス、イタリア、ウクライナ、エストニア、オーストラリア、カタール、カナダ、中国)10名の文化財保存修復専門家が参加しました。
 研修は講義、実習、見学で構成されています。講義では日本の文化財保護制度や和紙の基礎的な知識、伝統的な修復材料や道具について取り上げました。また、国の選定保存技術「装潢修理技術」保持認定団体の技術者を講師に迎え、紙本文化財を巻子に仕立てるまでの修理作業を中心に、和綴じ冊子の作製や屏風と掛軸の取り扱いについても実習しました。さらに、研修中盤には名古屋、美濃、京都を訪問し、歴史的建造物の室内における屏風や襖、国の重要無形文化財である本美濃紙の製造工程、伝統的な修復現場などを見学しました。そして、最終日の討論会では各国における和紙の利用・入手状況や日本の伝統技術の各国への応用などについて活発な議論が交わされました。
本研修を通じて、参加者が日本の修復材料や道具、技術についても理解を深め、それらの知識が諸外国の文化財保存修復に有効に応用されることを期待しています。

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