台北におけるワークショップ「染織品の保存と修復」の開催

基礎編終了後、参加者を囲んでの集合写真
応用編における作品調査実習

 令和元(2019)年8月14日から23日にかけて、ワークショップ「染織品の保存と修復」を国立台湾師範大学の文物保存維護研究発展センターにて開催しました。東京文化財研究所は同大学と締結した共同研究の一環として、海外に所在する日本の染織品の保存と活用を目的に平成29(2017)年より本ワークショップを毎年共催しています。日本および台湾から保存修復技術者や染織品関連の研究者を講師に迎え、基礎編「日本の染織文化財」を14日から16日に、応用編「日本の染織品の修復」を19日から23日に実施しました。基礎編には10カ国11名、応用編には5カ国6名の保存修復技術者、学芸員、学生らが参加しました。
 基礎編では日本の有形・無形文化財の保護制度、服飾材料学、日本の代表的な染織品に関する講義を行ったほか、着物を畳む、展示するといった取り扱い実習も行いました。また、和紙で着物のモデルを作製し、着物の構造を理解できるよう努めました。応用編では、染織品の劣化や染料の科学分析、清掃・洗浄などに関する講義や実習を行いました。加えて、裂を絹布に縫いとめて補強する処置や保存収納用のたとうの作製なども行い、参加者が日本における染織品の保存修復についての理解を深める機会となりました。両編を通じて、展示や保存修復事例などを共有するとともに、保存修復の考え方や材料、方法などに関する意見交換が活発に行われました。
 このように、日本の染織品とその保存修復に関する知識を海外の保存修復の専門家に伝えることで、在外の日本の染織文化財のよりよい保存と活用に寄与することを大いに期待しています。

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