第43回世界遺産委員会への参加

「百舌鳥・古市古墳群」に関する審議の様子
会場外観

 令和元(2019)年6月30日~7月10日にかけて、アゼルバイジャンの首都バクーにおいて、第43回世界遺産委員会が開催されました。
 今回の世界遺産委員会では、日本の「百舌鳥・古市古墳群」を含む、29件の資産が新たに世界遺産一覧表に記載されました。これは1回の世界遺産委員会で審議できる資産の数に上限が設けられて以来、最も多い件数になります。一見、望ましい状況のようにも思えますが、記載された資産のうち7件は、記載に至らないとする諮問機関の勧告を覆し、委員会の場で記載が決議されています。ここ数年、諮問機関の勧告から逸脱した決議が下されることにより、資産の価値や登録範囲が不明瞭なまま、世界遺産一覧表に記載されることが問題視されていますが、今年も状況が改善することはありませんでした。
 こうした状況を憂慮し、昨年の委員会では、特別なワーキング・グループを設立し、推薦や評価のプロセスを見直すことが決議されました。今年の委員会では、その議論の内容が紹介され、推薦プロセスを二段階制にし、現在の推薦プロセスの前段階として「事前評価」のプロセスを導入する方向性が認められました。この事前評価により、早い段階で諮問機関と締約国との間の対話が促され、推薦書の質が向上することが期待されています。現在のところ、事前評価を全ての締約国に必須のプロセスと位置付けつつ、その評価の如何によらず締約国にその後の推薦プロセスを継続するか否かの決定権を付与することが検討されていますが、その開始時期を含め、議論は始まったばかりです。東京文化財研究所では、今後も広く世界遺産全般に関する議論を注視し、こうした世界遺産条約の履行に関する多様な情報を収集・発信していきたいと考えています。

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