ケルンにおけるワークショップ「漆工品の保存と修復」の開催

漆塗りの実習

 海外の美術館や博物館に所蔵されている日本の漆工品の保存と活用を目的として、平成30(2018)年11月26日から30日にかけて、ケルン市博物館東洋美術館(ドイツ)にてワークショップ「漆工品の保存と修復」を開催しました。東京文化財研究所は、同美術館の協力のもと平成19(2007)年より本ワークショップを毎年実施しています。本年は、作品の保管や取り扱いにおいて必要となる知識や技術を中心とした基礎編を実施し、世界各国より6名の保存修復技術者が参加しました。
 講義では、漆の化学的な構造と性質、漆工品の構造や加飾技法、主な損傷や劣化、適切な保管環境などについて取り上げました。また、日本における保存修復の事例も紹介し、修復の理念と工程について解説をしました。実習では、木製スプーンに漆塗りを施すことで漆の性質をより深く理解できるよう努めました。また、損傷部分の養生やクリーニングといった応急的な処置も行い、修復の際に使用する道具の選択や作製方法などについても触れました。最終日にはディスカッションも行われ、西洋・東洋における保存修復の倫理や理念の違い、本ワークショップで得られた知識・技術の活用法など、活発な意見交換が見られました。
 海外の保存修復の専門家に、漆工品に関する基礎知識や保存修復技術を伝えることにより、国外の漆工品がより安全に保存され活用されていくことが期待されます。

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