国際研修「紙の保存と修復」2017の開催

実習の様子

 平成29年(2017)年8月28日~9月15日に国際研修「紙の保存と修復」を開催しました。本研修は1992年より東京文化財研究所とICCROM(文化財保存修復研究国際センター)の共催で、海外からの参加者へ日本の紙本文化財の保存と修復に関する知識や技術を伝えることにより、外国の文化財の保護へ貢献することを目指しています。本年は38カ国79名の応募の中から9カ国(アルゼンチン、オーストラリア、中国、チェコ、ギリシャ、イスラエル、ラトビア、フィリピン、アメリカ)10名の文化財保存修復の専門家を招きました。
 研修は講義、実習、視察で構成されます。講義では日本における有形および無形の文化財保護制度や和紙の基礎的な知識、伝統的な修復材料や道具について取り上げました。実習は国の選定保存技術「装潢修理技術」保持認定団体の技術者を講師に迎え、紙本文化財の洗浄から巻子仕立てまでの修理作業を中心に、和綴じ冊子の作製や屏風と掛軸の取り扱いも行いました。研修中盤には名古屋、美濃、京都を訪問し、歴史的建造物の室内における屏風や襖、国の重要無形文化財である本美濃紙の製造工程、伝統的な修復現場などを視察しました。また、最終日の討論会では紙本文化財の修復材料や保存環境といった各国の現状や課題について活発に議論がなされました。
 参加者が本研修を通じ、日本の修復材料や道具だけでなく、和紙を使用した修復方法や技術についても理解を深め、それらが諸外国の文化財保存修復に応用されることが期待されます。

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