第41回世界遺産委員会への参加

「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」に関する審議の様子
世界遺産委員会の開会式が開催されたヴァヴェル城

 第41回世界遺産委員会が、平成29(2017)年7月2日~12日にポーランドのクラクフで開催されました。本研究所も現地に職員を派遣し、世界遺産条約の履行に関する動向について情報収集を行いました。
 世界遺産一覧表への記載に関する審議では、諮問機関の勧告を覆して委員会で記載が決議される事例が目立ちました。今回、世界遺産一覧表には21件の資産が記載されましたが、このうち、諮問機関が記載にふさわしいと評価したのは、日本の「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」など13件に過ぎません。このように委員会で諮問機関の勧告が覆されるのは、諮問機関の専門家が関係締約国の提出した文書や情報の内容を十分に理解していないことに起因するとの指摘もあります。一方で、委員国が世界遺産登録のもたらす様々な利益を意識して、政治的判断を重視し、専門家の評価を軽視した結果だと指摘されることもあります。今回の世界遺産委員会の議長は、委員会での議論が政治的であると繰り返し懸念を表明しましたが、議論の傾向が大きく変わることはありませんでした。
 世界遺産条約の締約国は、自国の世界遺産を保護する責務を負っています。保護のための体制が不十分であったり、資産範囲や緩衝地帯が適切に設定されないまま、世界遺産一覧表に記載されてしまうと、こうした責務を果たすのは困難になります。世界遺産委員会の「政治化」は、世界遺産に対する各締約国の関心の高さを反映していると言えます。しかし、このような関心の高さが「贔屓の引き倒し」をもたらさないよう、各締約国は遺産保護のために必要な専門知識に基づき対応していくことが必要だと感じました。

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