第11回東京文化財研究所無形文化遺産部公開学術講座「麻のきもの・絹のきもの」の開催

公開学術講座の様子

 平成29(2017)年1月18日(水)に文化学園服飾博物館との共催で第11回東京文化財研究所無形文化遺産部公開学術講座「麻のきもの・絹のきもの」を開催しました。本講座では、我が国の染織を語る上では欠くことのできない「麻」と「絹」に焦点を当て、現在における麻と絹を取り巻く社会的環境の変化や技術伝承の試み、そして、受け継ぐ意義について、各産地で活動をされている方などから報告いただきました。
 麻については、昭和村からむし生産技術保存協会の舟木由貴子氏より「からむしの技術伝承―昭和村での取り組み―」、そして東吾妻町教育委員会の吉田智哉より「大麻の技術伝承 ―岩島での取り組み―」を報告いただき、植物としての麻を栽培する技術や植物から繊維を取り出す技術の重要性と伝承の難しさについて産地からの声を届けました。一方、絹に関しては岡谷蚕糸博物館の林久美子氏より近代化を支えた絹の技術革新と、その活動を残す意義についてご報告いただきました。
 その後、無形文化遺産部の客員研究員である菊池健策氏による講演「民俗における 麻のきもの・絹のきもの」、文化学園服飾博物館の吉村紅花学芸員による展覧会解説「展覧会 『麻のきもの・絹のきもの』の企画を通じてみた麻と絹の現状」の後、文化学園服飾博物館で開催されている「麻のきもの・絹のきもの」の見学会を行いました。
 麻のきものや絹のきものを取り巻く文化の継承には、その原材料である麻や絹そのものの技術が欠かせません。本講座を通じて、現在、麻も絹も伝承に多くの課題を持っていることを知っていただき、着物を作る技術だけでなく、その原材料である糸を作る技術の保護の重要性についての関心が高まればと思います。
 今後も無形文化遺産部では伝統技術を取り巻くさまざまな問題について議論できる場を設けていきます。

to page top