松澤宥旧蔵資料の受贈

松澤宥(Utopias & Visions、ストックホルム、1971年、写真中央)撮影:松澤久美子氏
松澤宥旧蔵資料の一部(1965年に開催された現代美術の祭典アンデパンダン・アートフェスティバル(通称・岐阜アンパン)の関連資料)

 このたび、研究プロジェクト「近・現代美術に関する調査研究と資料集成」の一環で、「松澤宥旧蔵資料の受贈」をご遺族から受贈しました。
 
 松澤宥(1922–2006)は、1960年代半ばから言語や概念を媒介とした表現を展開し、国際的なコンセプチュアル・アートの動向にも積極的に関わりました。こうした創作活動や思想を伝えるこの資料群は、コンセプチュアル・アートの展開を考えるうえで重要な研究資料となります。資料には、松澤の活動のなかで生まれた草稿、展覧会資料、写真などが含まれており、当時の美術の動向を理解するうえで有益な参照資料となっています。

 また、この資料群は、これまで当研究所で収集してきた資料だけでは十分に追いきれなかった部分、特に戦後日本における前衛的な表現活動の展開や、その実践を支えた個々のネットワークに光を当てる上でも、大変貴重な補完的資料となります。

 当研究所では、松澤宥旧蔵資料に関わる研究会を、2017年から4度にわたり開催するなかで、その研究資料としての価値、活用の可能性を関係者とのあいだで共有し、またJSPS科研費「ポスト1968年表現共同体の研究:松澤宥アーカイブズを基軸として」(18K00200、研究代表者:橘川英規)などを通じて、資料のデータ整理・デジタル化も進めてきました。資料の整理作業を進めるなかで、松澤の思考の変遷や国内外に広がるネットワークの姿がより鮮明に浮かび上がり、これらの資料は、彼の活動を振り返るうえで重要であるだけでなく、日本や海外における同時代のカルチャーシーンを多角的に読み解くための礎として、今後さまざまな分野での研究を支えていくに違いありません。

 研究プロジェクト「近・現代美術に関する調査研究と資料集成」では、日本の近・現代美術の作品や資料の調査研究を行い、これに基づき研究交流を推進し、併せて、現代美術に関する資料の効率的な収集と公開体制の構築も目指しております。この資料群は準備が整い次第、資料閲覧室で閲覧していただけます。現代美術をはじめとする幅広い分野の研究課題の解決の糸口として、また新たな研究を創出する契機として、ご活用いただければ幸いです。

◎JSPS科研費18K00200にて作成した松澤宥旧蔵資料のリスト
https://researchmap.jp/kikkawahideki/published_works
・日本概念派関連イベント資料(おもに1960~2007 年)約1400 件
・Data Center for Contemporary Art 資料(おもに1972~83 年)約850 件

※今回ご寄贈いただいた松澤宥旧蔵資料のうち、松澤による自筆原稿など81点のデジタル画像は、県立長野図書館が運用するデジタル・アーカイブ・システム「信州デジタルコモンズ」(https://www.ro-da.jp/shinshu-dcommons/search)にて公開されています。

to page top