「被災文化財等保全活動の記録に関する研究会」の開催

被災文化財等保全活動の記録に関する研究会

 2016年1月29日、「被災文化財等保全活動の記録に関する研究会」を開催しました。これは、国立文化財機構による文化財防災ネットワーク推進事業の一環として東京文化財研究所が取り組んでいる「危機管理・文化財防災体制構築のための調査研究」のひとつとして行いました。
 これまでの被災文化財等の保全活動に際しては、個々の現場に関する活動報告や、関係者間の会議や連絡の記録など、膨大で多種多様な記録資料が作成されてきました。そうした記録資料は、それぞれが直面した課題を学び、今後の活動のあり方を展望する手がかりともなります。そこで本研究会では、これまでの保全活動の記録が、どのように残され、現在活用されようとしているのかについての報告を行い、活動の記録が有する可能性について議論しました。
 当日は、大災害それじたいを記録する資料(災害資料)の収集・公開についての報告から始まり、阪神・淡路大震災における歴史資料ネットワークや被災文化財等救援委員会の活動、新潟県中越地震における地域歴史資料の保全や避難所資料の収集、東日本大震災における全国美術館会議の活動をもとに、それぞれ活動の記録の保存、活用という視点から報告が行われました。討論のなかでは、保全活動のなかでの記録の位置付けや、災害資料論として保全活動の記録をどのように捉えるかについて活発に議論されました。
 被災文化財等保全活動については、技術的・体制的な面での研究はもちろん、これまでの活動の記録についても継続的に議論を続ける必要があります。それを通じて、災害から歴史文化を守ることにつなげたいと考えています。

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