令和6年度博物館・美術館等保存担当学芸員研修(上級コース)」の開催




令和6(2024)年7月8日~12日に「令和6年度博物館・美術館等保存担当学芸員研修(上級コース)」を開催しました。
昭和59(1984)年以来、東京文化財研究所で開催してきた「博物館・美術館等保存担当学芸員研修」は、令和3(2021)年度より「基礎コース」「上級コース」として再編され、博物館・美術館等で資料保存を担当する学芸員等が、業務に必要となる知識や技術について、基礎から応用まで、幅広く習得できることを目的として実施しています。「基礎コース」は保存環境を中心とした内容で文化財活用センターが担当し、「上級コース」は保存環境だけでなく文化財保存全般を当研究所保存科学研究センターが担当し実施しています。
令和6年度の上級コースでは、保存科学研究センターで行っている各研究分野での研究成果をもとにした講義・実習や外部講師による様々な文化財の保存と修復に関する講義を実施しました。特に今年度は能登半島地震の発災に関連して、文化財レスキューについての講義が行われました。
・文化財修理原論
・文化財の科学調査
・空気質(空気質について/空気汚染の文化財への影響/空気質の換気の考え方)
・保管環境に関する理論と実践(空調)
・文化財IPM概論・実習
・修復材料の種類と特性
・屋外資料の劣化と保存
・近代化遺産の保護
・多様な文化財の保存と修復
・博物館の防災
・民具の保存と修復
・大量文書の保存・対策
・紙本作品等の保存と修復
・写真の保存・管理
受講生からは、本研修が今後の活動の大きな支えになった、直面している課題に対して知見を深めることができた、さまざまな内容に触れることで所属館の環境管理や防災を総合的に考えるための視点を得られた等の意見をいただきました。今年度は初日の終了後、意見交換会を開催しました。自己紹介を通じてこの研修に対する意気込みやそれぞれの館の課題が共有されました。受講生はこの研修によって近県の施設以外の学芸員の方と交流することができ、充実した研修となった様子が伺えました。