韓国文化財保存科学会第58回秋季学術大会への参加

研究発表の様子
会場となった公州大学校百済教育文化館

 令和5(2023)年11月10日〜11日、韓国・公州市の国立公州大学校を会場に、韓国文化財保存科学会第58回秋季学術大会が開催され、保存科学研究センター修復技術研究室研究員・千葉毅が参加しました。
 近年、韓国において近現代の文化遺産保護への関心がますます高まっています。この度の学会では、特別セッション「国家登録文化財(動産)保存処理標準仕様書制定研究(1次)」(主催:文化財庁、座長:国立公州大学校教授・金奎虎氏)として、近現代の文化遺産を、どのような制度・保存の方法で保護していくかが議論されました。
 千葉は「日本における近代文化遺産保護の概要と事例」と題し、日本の文化財保護制度における近代文化遺産保護の現状、近代文化遺産の特性や保存における技術的、理論・制度的課題の概要を報告しました。
 近代は世界各地で国際化が進んだ時代であり、日本においても当該期に製作された文化遺産の中には、海外からもたらされた新しい素材や技術が取り入れられていることが多くあります。素材や技法の多様化に加え、〈膨大な数〉〈工業生産品が多い〉〈現在でも使用されているものも多い〉等といった近代特有の側面を持つ文化遺産について、〈何を〉〈どれだけ〉〈どうやって〉残すのかといった課題は、日韓の両国で共通する点も少なくありません。
 地域ごとの特性を背景とした伝統的な材料・技法とは異なり、国境を超えて共通する素材も多く用いられた近代文化遺産を保存していくためには、国内での研究の蓄積に加え、国際的な交流も重要です。今後も両国での取り組みを学び合い、より研究、交流を深めていきたく思っています。

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