令和5年度博物館・美術館等保存担当学芸員研修(上級コース)の開催

空調に関する講義の様子
屋外資料に関する講義の様子
文化財害虫同定実習の様子
実験室見学の様子

 令和5(2023)年7月10日~14日に「令和5年度博物館・美術館等保存担当学芸員研修(上級コース)」を開催しました。
 昭和59(1984)年以来、東京文化財研究所で開催してきた「博物館・美術館等保存担当学芸員研修」は、令和3(2021)年度より「基礎コース」「上級コース」として再編され、博物館・美術館等で資料保存を担当する学芸員等が、業務に必要となる知識や技術について、基礎から応用まで、幅広く習得できることを目的として実施しています。「基礎コース」は保存環境を中心とした内容で文化財活用センターが担当し
https://cpcp.nich.go.jp/modules/
r_db/index.php?controller
=dtl&t=db_kenshukai&id=8
)、「上級コース」は保存環境だけでなく文化財保存全般を当研究所保存科学研究センターが担当し実施しています。
 令和5年度の上級コースでは、保存科学研究センターで行っている各研究分野での研究成果をもとにした講義・実習や外部講師による様々な文化財の保存と修復に関する講義を実施しました。講義・実習テーマは以下の通りです。初日には所内の見学も行いました。
・文化財修復原論
・文化財の科学調査
・空気質(空気質について/空気汚染の文化財への影響/空気質の改善・換気の考え方)
・保管環境に関する理論と実践(空調)
・文化財IPM概論・実習
・修復材料の種類と特性
・屋外資料の劣化と保存
・近代化遺産の保護
・多様な文化財の保存と修復(文化財レスキューについて/一時保管施設の環境管理/博物館現場で日常的に実践できる文化財防災)
・博物館の防災
・民具の保存と修復
・大量文書の保存・対策
・紙本作品等の保存と修復
・写真の保存・管理
 研修後のアンケートでは、研修全体を通して満足度が高かった様子がうかがえました。「実践的な知識を体系的に知ることができた」「最先端の研究を知ることができ、刺激を受けた」という感想が聞かれました。一方で、もう少し研修時間にゆとりを持たせて欲しいといったご意見や今後のフォローアップのご要望もいただきました。引き続き、保存担当学芸員の方々にとって有益な研修となるよう、研修内容を検討していきます。
昨年度は新型コロナウイルス感染対策のため受講者数は18名でしたが、今年度は感染状況が多少落ち着いていることに鑑み30名での開催となりました。受講者の所属は規模や館種も多様ですが、現場での悩みや問題意識は共通することも多く、受講者間の意見交換や交流も大きな意味を持つと考えています。ぜひこの研修で得られたネットワークも今後につなげていただければと思います。

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