2007年新潟県中越沖地震における被災文化財調査

地震により倒壊被害を受けた大泉寺本堂

 2007年7月16日午前10時13分、マグニチュード6.8、最大震度6強の地震が新潟県中越地方を襲いました(平成19年(2007年)新潟県中越沖地震)。震源近くである柏崎市などでは、家屋の全半壊、ライフラインの寸断など大規模な被害をもたらすと共に、多くの文化財も被害を受けました。保存修復科学センターでは、新潟県中越沖地震における文化財被害について、被害状況や被害要因を早急に把握し、応急措置や将来の修復計画に関する助言を行うことを目的に現地調査を行いました。調査期間は、2007年9月4日から5日まで、長岡・柏崎市内の文化財展示施設、文化財建造物を対象に行いました。
 はじめに、長岡市内の文化財展示施設を調査しましたが、火焔型土器をはじめとする展示・収蔵品に大きな被害は見られませんでした。2004年の地震を教訓とし展示・収蔵方法の見直しが行われたことが、関係者のヒアリングにより明らかとなりましたが、地震では長岡市内でも大きな揺れが観測されていたため、見直しの効果が出たものと考えられます。
 翌日は、震源地に最も近い柏崎市内で調査を行いました。被害状況は長岡市内とは比べものにならないほど悲惨な状況でしたが、寺の本堂などが全壊被害を受けるなど、文化財でも同様であることを確認する結果となりました。
 2007年は、能登半島地震にはじまり、大地震が頻繁に起こっています。東京文化財研究所ではこれからも、文化財の防災に関する研究を推し進めてゆくとともに、積極的な情報公開により、文化財防災についてより多くの方に知って頂くよう努力してゆく所存です。

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