宝生流謡曲百番収録へ向けて

今井泰男師による謡の録音

 宝生流の能楽師で、流派最長老の今井泰男師に、番謡(囃子なしで一番の謡曲を通して謡うこと)の録音を初めてお願いしたのは、2005年度のことでした。無形文化遺産部では、師による宝生流謡曲百番(現行は180曲)の収録を目指し、毎月2回ほどのペースで記録作成を行っています。6月29日に録音した『放下僧』で、収録数は83曲になりました。
 謡の技法は時代によって少しずつ変化します。今井泰男師は、大正10年(1921)3月生まれで、現在88歳。明治大正期を生きた名人たちの技芸を受け継ぎながら、今なお舞台で旺盛な活躍を続けている師の謡の全貌を収録することは、卓越した技の記録というだけでなく、能楽の伝承を考えてゆく上でも大きな意味を持つ、と考えています。

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