来訪研究員の留啓群氏と企画情報部研究会の開催

企画情報部研究会で発表する留啓群氏(左)

 国立台湾師範大学美術研究所の留啓群氏が、今年の2月から6月までの5か月間、企画情報部の来訪研究員として、当研究所を拠点に調査研究を行いました。留氏は日本統治時期の台湾美術を専攻しており、今回の調査研究はとくに日本近代における南画の動向を視野に入れるのがねらいでした。途中、東日本大震災で一時帰国も余儀なくしましたが、6月には一通りの資料収集を終え、6月29日の2011年度第3回企画情報部研究会で「日本統治時期における台湾伝統書画のアイデンティティーへの模索」と題して、調査研究の成果を発表しました。東アジアに通底する伝統的な“書画”、そして近代以降に西洋よりもたらされた“美術”という二つの枠組みのはざまで台湾や日本の思惑が交錯するさまを、当時の南画をめぐる言説を通してうかがう重厚な内容でした。
 同研究会では留氏の発表に引き続き、相模女子大学教授の南明日香氏にも「ジョルジュ・ド・トレッサン(1877-1914)の室町期絵画評価」と題してご発表いただきました。ジョルジュ・ド・トレッサンはフランス陸軍の軍人で、日本美術を愛好し多くの論考を残した人物です。南氏は忘れられていたトレッサンの業績の検証にここ数年努めており、今回の発表では彼の室町期絵画への評価に焦点を当て、その情報の源泉、論考の特色、同時代意義を考察しました。発表後のディスカッションでは、所内の日本美術研究者に所外のフランス美術の専門家もまじえ、20世紀初頭のヨーロッパにおける日本および東洋美術の評価をめぐって活発な意見が交わされました。

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