第5回伝統的修復材料および合成樹脂に関する研究会「建築文化財における伝統的な塗料の調査と修理」

塗装標本等資料見学の様子

 保存修復科学センター伝統技術研究室では、9月29日(木)に当研究所地下セミナー室において「建築文化財における伝統的な塗料の調査と修理」と題する研究会を開催しました。この研究会は、一昨年に開催した第3回研究会の「建築文化財における漆塗料の調査と修理」の続編ともいえる内容です。漆塗料は日本を代表する優れた伝統的な塗料であると同時に修復材料でもあります。修復の現場では建築文化財の塗料には漆塗料、あるいは顔料+膠材料の二つしかないかのようなイメージがありました。ところが、実際にはそれ以外の乾性油や松脂、柿渋など様々な材料を時と状況に応じて塗料として使用してきたことが明らかになってきました。今回の研究会では、このような漆塗料でもない膠材料でもない、いわば第三の塗料について取り上げました。研究会では、まず北野が問題提起を行い、建築装飾技術史研究所の窪寺茂先生から主に「チャン」と呼ばれる塗料とその塗装技法についてお話をいただきました。次に、日光社寺文化財保存会の佐藤則武先生から、日光社寺建造物の漆塗料以外の塗料の状況について技術者という立場から御講演いただきました。最後に明治大学の本多貴之先生から、乾性油を中心とした塗料の科学についての解説と、実際に日光社寺建造物の塗料の有機分析を行った結果の報告をいただきました。講師の方々のお話は、それぞれ専門の立場からの話題提供であっただけに説得力もあり、さらに会場では佐藤先生にお持ちいただいた日光社寺建造物の塗料資料や手板などを見学することもできました。

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