茨城県日立市十王「ウミウの捕獲技術」の調査 第二弾

15㍍の断崖にあるトヤ(鵜を待つ小屋)と囮の鵜
カギを使って捕獲されたばかりの鵜

 11月上旬、茨城県日立市十王町にて「ウミウの捕獲技術」(日立市無形民俗文化財)の調査を行ないました。春に震災被害の調査を兼ねて同地を訪ねてから、二回目の調査です。今回はちょうど秋の鵜捕りシーズンに当たっており、実際の捕獲の様子も調査・記録することができました。鵜捕りは、囮の鵜を用いて飛来する鵜をおびき寄せ、長いカギで引っ掛けて捕獲するものです。捕獲された鵜は、嘴をハシカケと呼ばれる専用の道具で固定し、竹かごに入れて依頼のあった全国の鵜飼地へ輸送されます。今秋は囮の鵜三羽を含む、一九羽が捕獲されました。
 今回の調査では、たまたま一羽の鵜の捕獲に立ち会うことができましたが、何日待っても一羽も飛んでこない時もあるということで、技術体系としては、鷹の捕獲技術やマブシ猟などと同じ、待ち伏せを基本とする古い狩猟の形態をよく保存しています。質のよい鵜だけを見極めて獲る必要があること、大量の捕獲の必要がないことなどから選択・継承されてきた捕獲方法といえます。しかし逆に、鵜捕りだけでは生業として成り立ちにくいことから、後継者不足もひとつの課題になっています。全国の十二の鵜飼地において用いられる鵜は、ほとんどすべてがこの場所で捕獲されたものであり、鵜飼の伝承を下支えするものとしても重要な意味を持つ民俗技術です。今後、技術の伝承を支えていくための、さらなる保護が必要になってくるものと思われます。

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