選定保存技術の調査-邦楽器原糸・檜皮葺・昭和村からむし

邦楽器原糸製造
檜皮葺
からむしの収穫

 文化遺産国際協力センターでは、選定保存技術に関する調査を行い、日本の文化財を守り支える伝統的技術として海外に情報発信する取り組みを行っています。2015年7月には邦楽器原糸・檜皮葺・昭和村からむしの調査を行いました。
 三味線、箏などは伝統的な邦楽器であるとともに、文楽や歌舞伎の上演に必要不可欠な楽器です。これらの楽器の絃は、現在ではナイロンなどの合成繊維なども用いられていますが、絹糸製のものが最良とされ、その演奏と音色を支えていると言っても過言ではありません。滋賀県木之本町邦楽器原糸製造保存会にご協力頂き、座繰り(繭から糸を取る作業)の工程について聞き取り調査と写真撮影を行いました。近年では国内の養蚕業の衰退が進行しており、伝統的な技術の継承が課題となっています。
 檜の立木から採取した樹皮を整えて屋根の材料として葺いていく檜皮葺は、伝統的な寺社建築などに用いられており、定期的に造替する必要があるため、良質な材料の確保と技術の伝承が重要です。昨年10月の檜皮採取の調査に引き続き、今回は公益社団法人・全国社寺等屋根工事技術保存会所属の株式会社友井社寺にご協力を頂き、奈良県生駒市の寳山寺聖天堂において屋根葺替工事の調査撮影をさせて頂きました。
 重要無形文化財に指定されている越後上布・小千谷縮は、福島県大沼郡昭和村で栽培・加工される苧麻(からむし)を原料として作られます。昭和村からむし生産技術保存協会および会員の方々のご協力のもと、2メートル以上に成長したからむしの収穫、皮剝、苧引きの各工程について調査させて頂きた。他の伝統工芸産業と同様に、従事者の高齢化が進んでおり、後継者育成と技術の伝承が喫緊の課題となっています。この調査で得られた成果は、報告書にまとめるほか、海外向けのカレンダーを制作する予定です。

to page top