企画情報部研究会の開催―世界遺産の現状と課題について

第37回世界遺産委員会での「富士山」記載の瞬間

 4月21日に開催された企画情報部研究会では、「世界遺産委員会における諸課題とその解決、及び世界遺産条約の文化財保護への活用に向けての試論」と題し、二神葉子(企画情報部)が報告を行いました。報告者は2008年から世界遺産委員会を傍聴し、審議内容の分析を行っています。
 世界遺産に対する一般の関心は高く、多くの観光客が世界遺産を訪れます。しかし、世界遺産関連の書籍の多くは個別の遺産に関する内容で、世界遺産委員会やその課題を具体的に示す日本語の論考はあまりありません。
 研究会では、世界遺産一覧表への推薦から記載までの流れや、世界遺産委員会での審議方法について確認し、締約国から選ばれて議論に参加する21カ国の委員国、専門的な立場から委員会に対して助言を行う諮問機関や、事務局であるユネスコの世界遺産センターそれぞれが抱える課題を指摘しました。また、文化財保護の専門家としての世界遺産条約の活用についても意見を述べました。
 世界遺産条約の本来の役割は、保護の枠組みを整え、文化遺産・自然遺産を将来に引き継ぐことです。一覧表記載への推薦書には保護に関して記述しなければならず、一覧表への記載の過程は、保護の枠組みの確認や整備の過程でもあります。このことを利用して、効果的な文化財保護の国際支援が可能であると考えます。国内でも、世界遺産委員会の動向を知れば、推薦書や保全状況報告を効率的に作成できることが期待されます。このような理由から、世界遺産委員会や世界遺産条約に関する調査研究を今後も行っていきたいと考えています。

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