選定保存技術の調査―蒔絵筆・本藍染・檜皮採取

蒔絵筆制作
本藍染
檜皮採取

 文化財は人類共通の財産として後世に守り伝えていく必要があります。そして文化財を作る材料、道具、修復する技術も継承、活用されていかなければ、文化財を良好な状態で保存していくことはできません。日本の文化財の保存修復技術はその有用性が海外でも認識され、応用されています。文化財の保存のために欠くことのできない伝統的な技術で保存の措置を講ずる必要があるものを、文部科学大臣は選定保存技術として選定し、その保持者および保存団体を認定しています。現在、選定保存技術の選定件数は71件、保持者数は57名、保持団体は31団体あります。
 文化遺産国際協力センターでは、選定保存技術にかんする調査を進め、広く国内外に情報発信を行っています。選定保存技術保持者の方々から作業工程や作業を取り巻く状況や社会的環境などについて聞き取り調査を行い、作業風景や作業に用いる道具などについて撮影記録を行っています。2014年10月には、京都・村田九郎兵衛商店にて村田重行氏による蒔絵筆の制作、滋賀・紺九にて森義男氏による本藍染、兵庫・粟賀神社にて大野浩二氏による檜皮採取の調査・取材を行いました。今回調査させて頂いた3件は漆芸、染織、建築といったそれぞれ異なるジャンルの伝統的、専門的技術ですが、天然の材料と真摯に向き合い、さまざまな環境の変化に対応しながら人の叡智と技術によって伝統を守り続けていることは共通すると言えます。この調査で得られた成果は、文化財の研究資料として蓄積・活用して行くと同時に、海外向けには視覚的効果の高い画像を使用したカレンダーという頒布媒体を通じて、日本文化のありかたや、文化財をつくり、守る材料・技術として国際的に発信していく予定です。

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