山形・岩手県における神楽調査 ―韓国国立無形文化遺産院との研究交流―

東北の神楽についての成果発表を行う李明珍氏(左)

 無形文化遺産部と「無形文化遺産の保護及び伝承に関する日韓研究交流」を行っている韓国国立無形文化遺産院より、本年は調査研究記録課の李明珍氏が8月11日より30日間に渡って来日されました。今回、李氏は「東北地域の神楽伝承」をテーマとし、杉沢比山番楽〔すぎさわひやまばんがく〕(山形県遊佐町)および早池峰岳神楽〔はやちねたけかぐら〕・幸田〔こうだ〕神楽(岩手県花巻市)の共同調査を行い、9月8日に当研究所セミナー室で開催された成果発表会にて、その研究成果が報告されました。
 李氏は、まず東北地方の修験道の特色、神楽と修験道との関わりについて基礎的な把握をした上で、三つの神楽伝承を比較検討しました。特に伝承の維持・継承の具体的事例、保存会や行政の関与といった、無形文化遺産の保護に関した問題を詳細に考察し、韓国と比較して論じました。また民俗芸能としての東北地方の神楽伝承の特徴についても論及し、韓国における「クッ」や「仮面劇」との比較の可能性をも示唆しました。無形文化遺産について、文化財保護と民俗学双方の観点から現状と問題点が提示された、有意義な成果発表会となりました。

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