韓国国立無形遺産院との研究交流

膠の原材料(ニベの浮袋)

 無形文化遺産部では韓国国立無形遺産院と研究交流を行っています。本年度は菊池が8月18日より2週間、韓国の染織技術について伝承の現状を調査しました。
 染織技術の伝承には「材料や道具」の情報が不可欠です。出来上がりの見た目が似たものであっても、材料や道具が異なることで、やり方(技法)が変わり、技術にも影響があります。
 現在、日本では文化財保護法の重要無形文化財の各個認定(人間国宝)には指定要件が設けられていません。それは、どのような材料を選び、道具を用い制作していくのかの選択をできることが保持者にとって欠かせぬ要素であるとも考えられているためでしょう。一方、保持団体認定には指定要件の中で材料や道具を制限しているものもみられます。各個認定と団体認定の大きな違いがここにあると考えられます。材料や道具を制限することは制作活動において様々に作用します。生活環境の変化により、手に入りにくい材料や道具もあるからです。このような日本の現状を踏まえて、韓国では材料と道具に焦点をあてて聞き取りを行いました。
 今回調査したのは韓国で重要無形文化財として指定されている金箔、組紐、裁縫、木綿織、藍染の技術です。これらの技術は日本にも根付いていますが、材料や道具が異なります。たとえば金箔を比べてみると、日本では和紙に柿渋を塗り作られた型にフノリ、姫糊、もち糊等が使われてきたと考えられています。一方、韓国では木型とニベという魚の浮袋で作った膠を使用し接着する技術が伝承されています。現在では、ニベ膠を取り巻く環境は変化し、手に入りにくい材料となっているということでした。
 今回の調査を通じて、韓国でも日本同様、どのような材料を選び、道具を用い制作していくのか選択できることが保有者に欠かせぬ要素であると考えられていると感じました。両国とも材料や道具の供給の状況は日に日に変わっています。今まで用いていた材料や道具が選択肢として失われぬよう、技術を支える技術も伝承していくことは両国共通の課題であることが分かりました。

to page top