韓国における伝統技術の調査―韓国国立文化財研究所との第二次研究交流―

潭陽郡立 竹の博物館にて

 昨年度から始まった第二次「無形文化遺産の保護及び伝承に関する日韓研究交流」の一環として、無形文化遺産部の今石が6月12日から2週間の日程で韓国を訪問しました。現地では韓国の伝統的技術とその伝承・保護をテーマに、全羅南道潭陽地域における竹細工や、仁川市江華島の莞草細工の技術について調査しました。
 このうち潭陽は、かつて地域住民のほとんどが竹細工に関わっていたという竹製品の一大産地であり、彩箱(チェサン)作りや扇子作り、櫛作りなど5つの分野で国や市道の文化財指定を受けています。調査では文化財保有者(保持者)にお会いして伝統的な技術やその変遷について、また伝承の現状等について伺いました。さらに文化財を取り巻く状況として、潭陽郡が行う“竹文化”の観光資源化と地域活性化の動き――新しい竹製品の開発、郡独自の職人支援制度(郡の名人制度)、竹関連施設の運営等――についても知ることで、過去から現在、未来に向けて、文化財がどのように継承されていこうとしているのか、その一端を知ることができました。
 ところで、韓国の保護制度においては“無形の文化財”に当たるのは実質的に「無形文化財」のみであり、日本でいう民俗技術(無形民俗文化財)も工芸技術(無形文化財)もすべて「無形文化財」として、ひとつの制度で保護されています。従って、日本では「国民の生活の推移の理解のため欠くことのできないもの」という価値づけがされる民俗文化財に当たるものも、韓国では「無形文化財」すなわち「歴史的・芸術的又は学術的な価値が大きいもの」として認識されることとなります。こうした日韓の制度の違いが、保有者や一般社会の認識、技術そのものにもたらす様々な影響についても、今後の研究交流の中でしっかりと捉えていく必要があると感じました。

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