スタンレー・アベ氏講演会

講演会の様子

 中国美術史の専門家スタンレー・アベ氏(米国デューク大学教授)を企画情報部来訪研究員としてお迎えしたのを機会に、6月5日(水)14時から17時30分まで、当所地階会議室において、「「中国彫刻」のイメージの形成」をテーマに講演会を開催しました。
 アベ氏の発表では、中国には19世紀まで西洋的な「彫刻」という概念がなく、立体造形物はそれに付随する文字が重視されたり、贈答品や骨董品として位置づけられたりと、多様な価値評価がなされていたことが指摘されました。そしてそれらが、近代以降、中国を訪れた西欧人、日本人の収集対象となって美術品という新たな価値を得ていく過程が跡づけられました。
 講演後、田中修二氏(大分大学教育福祉科学部准教授)、岡田健(当研究所保存修復科学センター長)をコメンテーターとして行われたディスカッションでは、西欧の「彫刻」概念と出会う以前の中国と日本では、立体造形物の位置づけと価値基準が違い、それらを制作した人々の社会的地位も異なっていたこと、中国では「彫刻」といえば近代以降の制作物という意味合いが強いことなどが明らかになりました。
 議論を通じて浮かび上がってきたのは、西洋文化の受容や造形の近代化のあり方の多様性、それを支える歴史的経済的背景などです。講演会には48名が参加し、盛会となりました。

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