“「文化財の保存環境を考慮した博物館の省エネ化」に関する研究会-LED照明導入と省エネ-”の開催

研究会の様子(藤原工氏のご講演)

 近年、白色LED照明技術の発展は目覚ましく、高演色化や色温度のバリエーション化は、色の再現性と様々な演出効果の実現を求める展示照明への導入を検討できるレベルにまで達していると言えます。一方で、文化財施設からは資料への影響や、従来の照明との見え方の違い、導入コストに見合った電力消費削減の実現などに対する不安の声も少なくなく、白色LED開発と展示照明としての現状に関して情報共有を図る必要があると考え、表題の研究会を平成25年2月18日に開催しました。
 本研究会では、技術開発に携わる専門家と、展示照明としての導入を行った美術館の担当者、それぞれ二人ずつをお招きして、それぞれの立場からの報告をして頂きました。技術開発に関しては、株式会社灯工社の藤原工氏から白色LEDの基本原理と最新の技術動向について、また、シーシーエス株式会社の宮下猛氏には、従来の青色励起型に比べて、より自然光に近い発光特性を持つ紫色励起白色LEDの開発と博物館施設への導入についてお話頂きました。また、展示照明として早い時期に白色LEDを導入した山口県立美術館の河野通孝氏からは、色温度のコントロールといったLED光源の特性を最大限に活かした展示演出などの実践に関して、また、国立西洋美術館の高梨光正氏からは、実測に基づく省エネ効果に加えて、特に油彩画の従来照明と比較した見え方の違いといった、常に作品と接しているからこそ感じる白色LEDの特徴について取り上げて頂きました。
 近年、地球温暖化対策として、エネルギー効率の低い白熱電球の生産が段階的に縮小・廃止されています。また、今年10月に国際条約として採択される見込みの「水銀に関する水俣条約」では、水銀を含む製品の2020年以降の生産縮小が決まる見込みで、蛍光灯の使用継続に困難が生じると予想されます。代替光源の導入が文化財施設にとって否応無しの問題となっている現状を反映して、今回は全国から130名の参加者を得ました。質疑応答では紫外線の除去や温度変化といった資料保存、また色温度などや演出に関わる問題まで幅広い質問が出されました。今回の研究会でも明らかになった課題や関係者の期待に応えるためにも、私たちはこれからも白色LEDとさらに次世代光源である有機ELに関する最新の情報収集と保存の観点からの研究・評価を行い、また現場のニーズを開発側に伝える役割を果たしながら、これらの光源が真に展示照明となりうるための一役を担っていきたいと考えています。

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