「さまよえる文化遺産―文化財不法輸出入等禁止条約10年―」の開催

シンポジウム会場風景
パネルディスカッションの様子
イタリア カラビニエリ(国家治安警察隊)クアリアレッラ氏による講演

 文化遺産国際協力コンソーシアムでは、毎年一般の方を対象にシンポジウムをおこなっています。今年度は12月1日(土)に、東京国立博物館平成館大講堂にて、「さまよえる文化遺産―文化財不法輸出入等禁止条約10年―」(主催:文化遺産国際協力コンソーシアム、文化庁)として開催しました。
 「文化財の不法な輸入・輸出及び所有権移転を禁止し及び防止する手段に関する条約」(「文化財不法輸出入等禁止条約」)を我が国が締結してから今年で10周年を迎えました。今回のシンポジウムでは、この条約のもとで我が国が進めている文化財を不法な輸出入から保護する取り組みや現状について紹介するとともに、海外での取り組みも紹介しました。
 まず、我が国の取り組みについて文化庁の塩川達大国際協力室長から、また地方自治体による取り組みとしては奈良県警察本部の文化財保安官である辻本忠正警視からそれぞれ報告していただきました。文化財流出の現状については美術商である欧亜美術店主の栗田功氏をお招きし、文化財が流出する国における流出文化財問題の根底にある部分をご紹介いただきました。また、外国の事例として、イタリアからお招きしたカラビニエリ(国家治安警察隊)のクアリアレッツラ文化材権利保護作戦班長から、カラビニエリによる文化遺産保護活動を、美術品変造や不法輸出摘発の実際の事例とともに報告いただきました。すべての報告後には、報告者に加えて財務省関税局監視課からも五十嵐一成課長補佐をパネリストに迎え、活発な議論が展開されました。
 日頃は話を聞く機会の少ない問題でありながら、実際には身近な問題を扱った今回のシンポジウムは、来場者である一般の方々からも高い評価を得ることができました。今後も文化遺産国際協力コンソーシアムでは、文化遺産に関わる問題を一般の方々にご理解いただける機会を設けることができればと考えています。

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