仙台、昭忠碑の高所作業車による調査・作業

高所作業車による調査の様子。右下に落下したブロンズの鵄がみえます。
塔上、ブロンズ部の被災の様子。中央から右に突き出した植物装飾が、緩んだボルト一本でかろうじて留まっている状況です。

 仙台城(青葉城)本丸跡に建つ昭忠碑は、明治35年(1902)、仙台にある第二師団関係の戦没者を弔慰する目的で建立されたモニュメントです。今年1月の活動報告でもお伝えしたように、同碑は昨年の東日本大震災で20m余りの塔上部に設置されたブロンズの鵄が落下・破損するという被害を受けました。そこで1月に行なった被害調査・破片回収に引き続き、6月26日には文化財レスキュー事業の一環として高所作業車を使用し塔上部・塔部の被害調査および破片回収等の作業を実施しました。
 今回の調査・作業には昭忠碑を所有する宮城縣護國神社の方々をはじめ、宮城県被災文化財等保全連絡会議から三上満良氏(宮城県美術館)、国内にある屋外彫刻の調査保存で実績のある屋外彫刻調査保存研究会の方々、地元建設会社の(株)橋本店の方々が参加し、また東京芸術大学美術学部工芸科の橋本明夫氏、同大学美術学部教育資料編纂室の吉田千鶴子氏も調査に加わりました。また今回の作業は、(有)カイカイキキから文化財レスキュー事業に役立てるべく東京文化財研究所にいただいた寄付金により行われました。
 今回の調査では塔上部にも多くのブロンズ破片が散乱していることがわかり、その回収を行いました。さらに残存するブロンズ部を調査したところ、植物装飾の一つが緩んだボルト一本でかろうじて留まっていること、ブロンズの鵄を支えていた柱礎のくびれ箇所に亀裂が廻っていること、塔上で水平に張り出したコーニスに落下したブロンズの一部が衝突して陥没した穴がみられること等が確認されました。今回は外れかかっている植物装飾をベルトで固定し、柱礎より上の部分をブルーシートで覆いましたが、これはあくまで応急処置であり、再び大地震が発生すれば塔下へ落下する危険性があります。さらにコーニスにあいた穴や破損した柱礎からの雨水の塔内へ侵入が塔全体の崩壊につながる恐れもあり、塔下に落下したまま放置されているブロンズの鵄の処置と併せ、引き続き対策を講じていくことが必要です。

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