日本製漆工品と日本人専門家-タイ所在日本製漆工品に関する調査研究(2)英語版-の刊行

『日本製漆工品と日本人専門家-タイ所在日本製漆工品に関する調査研究(2)英語版-』表紙

図版の例(三木栄旧蔵蒔絵道具箱の内容物)

ワット・ラーチャプラディットの日本製漆扉
東京文化財研究所は、平成4(1992)年以来タイ王国文化省芸術局と共同で、タイに所在する文化財の調査研究を実施してきました。平成23(2011)年からは、バンコクの王室第一級寺院ワット・ラーチャプラディットの日本製漆扉部材に関する調査研究や、芸術局が行う漆扉部材の本格修理への技術的な支援を行っています。
この漆扉部材のほか、タイには図書館、博物館、寺院、宮殿など様々な場所に日本製漆工品があります。また、漆工に関する日タイ両国の交流は物品にとどまらず、ラーマ5世王(1853-1910)は蒔絵に魅せられ、その技術を学ぶために留学生を日本に派遣し、王室第一級寺院ワット・ベンチャマボピットの本尊に金箔を貼るため、鶴原善三郎を明治43(1910)年にタイに招きました。三木栄は明治44(1911)年から30年あまりタイに滞在、現在の芸術局の職員として漆工品制作や修理に携わりました。
令和7(2025)年3月に刊行した標記の報告書では、タイにある日本製漆工品や、漆工品が写ったタイの古写真、上記の日本人漆工専門家について、日タイの研究者によるこれまでの研究成果をまとめました。これらの成果は、漆工分野での両国の交流に関する新たな知見で、ワット・ラーチャプラディットの漆扉部材の漆工史や日タイ交流史上の位置づけを知る上でも有益です。
本報告書には令和6(2024)年3月刊行の日本語版もありますが、英語版には新たな知見や写真が含まれます。公共図書館などでぜひ両方をご覧ください。本報告書で紹介した日本製漆工品は一部に過ぎず、日本人漆工専門家に関する文献資料も続々と発見されていますので、引き続き成果を発表する予定です。