研究所の業務の一部をご紹介します。各年度の活動を網羅的に記載する『年報』や、研究所の組織や年次計画にもとづいた研究活動を視覚的にわかりやすくお知らせする『概要』、そしてさまざまな研究活動と関連するニュースの中から、速報性と公共性の高い情報を記事にしてお知らせする『東文研ニュース』と合わせてご覧いだければ幸いです。なおタイトルの下線は、それぞれの部のイメージカラーを表しています。

東京文化財研究所 保存科学研究センター
文化財情報資料部 文化遺産国際協力センター
無形文化遺産部


『無形文化遺産研究報告』の刊行

『無形文化遺産研究報告』第3号

 2006年度、芸能部が無形文化遺産部へと改組改称されたことにともない、報告書の誌名も『芸能の科学』から『無形文化遺産研究報告』へ改められました。今年度はその第3号となりますが、芸能に限定することなく無形の文化財全般を扱う報告書として、掲載している研究論文や報告の半数は直接「芸能」とは結び付かない内容となっています。準備が出来次第、これまでと同様に全内容のPDF版をホームページ上で公開する予定です。

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第2回アジア無形文化遺産保護研究会

第2回アジア無形文化遺産保護研究会の様子

 無形文化遺産部では、アジア地域における無形文化遺産保護の政策的な取り組みについて学ぶ研究会を昨年度より開催しています。今年度は、2009年2月19日に、韓国文化財庁無形文化財課長の金三基氏を迎え、「韓国の無形文化財制度」と題した講演をしていただき、外部からの関係者も交えて討議しました。とくに無形文化財の指定・保有者の認定のプロセスや、韓国の無形文化財保護制度の特徴といえる、無形文化財保有者に義務づけられた専授教育制度について詳細に紹介され、参加者からも活発な質問や意見が出されました。日本と韓国は、ともに世界に先駆けて無形の文化の保護を制度化してきましたが、今回の研究会ではその共通点と相違点が浮き彫りになり、それぞれが抱える問題点について双方の取り組みを参照することの有効性があらためて感じられました。

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国際セミナー「無形文化遺産の共有」 メキシコ合衆国オアハカ市

国際セミナー「無形文化遺産の共有」

 この国際セミナーは、国際社会科学会議、メキシコ国立大学等の主催、メキシコ政府及びオアハカ市の全面協力で開催されたもので、アジアから唯一の参加者として無形文化遺産部の宮田が招聘され、“The Creation of Future Intangible Cultural Heritage in Japan”というテーマでの講演を行いました。メキシコは無形文化遺産保護条約の政府間委員会委員国であり、また現在各国から提出されている代表リスト登録候補を検討する補助組織の構成国でもあり、無形文化遺産に関する活動を積極的に展開している国の一つです。このセミナーにも、ユネスコ事務局をはじめ、無形文化遺産保護条約締約国総会議長のカズダナール氏やなど、無形文化遺産保護に関する重要人物も招聘され、地元関係者との間で活発な議論が展開されました。無形文化遺産部では、今後もこうした機会には積極的に参加し、日本の経験を広く発信したいと考えています。

第3回無形文化遺産部公開学術講座

第3回無形文化遺産部公開学術講座

 無形文化遺産部公開学術講座を、12月16日に国立能楽堂大講義室で開催しました。 無形文化遺産部では、平成18年度より、文化財保護委員会(現在の文化庁)が作成した音声記録を講座の題材に取り上げています。今年度は、「音声資料からたどる能の変遷」と題して、能囃子の記録を紹介しました。
 昭和26年度に作成された能囃子の記録は、大鼓の川崎九淵、小鼓の幸祥光、この二人の演奏を録音することが主たる目的だったようです。川崎九淵と幸祥光は、昭和30年の第1次重要無形文化財保持者各個認定を受けています(いわゆる「人間国宝」)。講座では、文化財保護委員会が作成した記録の意義や現在の伝承との関りについての解説を交えながら、大正・昭和の能を支えた二人の至芸を聴いていただきました。
 来年度も、文化財保護委員会作成音声資料を題材に、講座を開催する予定です。

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第3回無形民俗文化財研究協議会

第3回無形民俗文化財研究協議会

 無形文化遺産部では、2008年11月20日に、第3回無形民俗文化財研究協議会を開催いたしました。今年度のテーマは「無形民俗文化財に関わるモノの保護」でした。無形の民俗文化財である風俗慣習、民俗芸能、民俗技術などを保護するためには、そのわざを伝えることはもちろんですが、材料や道具、造り物、山車や屋台など、多くのモノを適切に確保し、維持していかなければなりません。このような観点から、実際の伝承や保護に携わる関係団体4件の事例報告を聞き、フロアも含めて討論を行いました。「使いながら守ること」の難しさや、新たな創造も視野に入れた保護の活動の組織、有形と無形を一体で保護していくための制度づくりなどについて、積極的な議論が行われました。この協議会の内容は報告書にまとめ、2009年3月に刊行予定です。

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韓国国立文化財研究所での研修

 本年6月に韓国国立文化財研究所無形文化財研究室との間で合意に達した「無形文化遺産の保護に関する日韓研究交流」にもとづき、無形文化遺産部の俵木が、本年10月、韓国において二週間の研修を行いました。今回の研修の目的は、韓国における無形文化遺産の映像記録のアーカイブの現状を調査し、それを日本の無形文化遺産の記録の管理と活用に役立てることです。韓国では国立文化財研究所が積極的に無形文化遺産の映像記録作成を行っており、それらは国家記録院や韓国映像資料院といった機関と連携して管理されています。その組織的な管理体制には学ぶべき点が多いと感じました。また、研究所が作成した記録映像がテレビ放送の素材になるなど、積極的な活用の実態も印象的でした。無形文化遺産部では現在、日本の無形文化遺産の記録の所在情報のデータベース化の作業を行っており、今後はこうした方面での両国の情報共有などについても検討していきたいと思っています。

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昭和30年代の古曲の記録

宇治文雅(1881-1975)と二世宇治紫友(六世宇治倭文 1907-1986)による一中節『双生隅田川』

 無形文化遺産部所蔵テープは、現在デジタル化を順次進めています。デジタル化とは、単にメディアをCDに転換するだけではありません。録音の確認(テープの箱書きとの照合等々)の後、内容に即したインデックス(見出し)付与をしなければ、資料として活用する上で、利便性に欠けることになります。
 平成17年度に受け入れ手続きが完了した竹内道敬旧蔵音声資料(以下「竹内コレクション」)には、演奏が昭和30年代に溯る古曲(河東節・一中節・宮薗節・荻江節)のオープンリールテープが数多く含まれていました。そのほとんどが市販を目的とした録音ではなかったようです。
 写真は宇治文雅(1881-1975)と二世宇治紫友(六世宇治倭文 1907-1986)による一中節『双生隅田川』のテープからCD化したものです。演奏時間が約1時間に及ぶ大曲です。今後は、こうした一般に試聴の機会が滅多になかった貴重な録音について、多くの方が活用できるような環境を整えてゆきたいと考えています。
 なお、「竹内コレクション」の内、SPレコードに関しては、整理が完了したものから目録の形で公開しています(『芸能の科学32』『無形文化遺産研究報告2』)。

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第23回国際服飾学術会議への参加

第23回国際服飾学術会議の様子

 8月20・21日、飛騨・世界生活文化センター(高山市)において、第23回国際服飾学術会議が開催されました。日本をはじめ、韓国、台湾、モンゴルの研究者、染織家、デザイナーら約200人が参加し、意見交換を行ないました。無形文化遺産部からは菊池が参加し、研究発表を行いました。
 今回の学術会議では、「服飾文化の東西交流」を共通テーマとして、講演、研究発表、ポスターセッション、創作衣装展などが行われました。
 各国からの参加者は染織技術についての研究に触れ、国による技術保存の考え方の違いや、復元という試みに対しての認識を深めていました。
 また、この出張に際して、美濃和紙の里会館(美濃市)と春慶会館(高山市)を視察し、伝統工芸技術に関する情報収集を行いました。無形文化遺産部においては、工芸技術に関する情報収集がはじまったばかりです。今後も、地域や対象を拡大させつつ、積極的に情報収集を行なってまいります。

徳川美術館の楽器調査

 徳川美術館は、雅楽や能楽の楽器を多数所蔵しています。今回は、能管・龍笛・一節切の調査を行いました。能管二管のうち、一管「蝉折」は藤田流七世清兵衛による極めがあり、「獅子田」の作とされています。修復技術保存センターの犬塚・松島両研究員の協力を得てX線撮影を行った結果、従来の能管の製法とは異なり、一本の太い竹材を用いていることが判明しました。能管は、歌口と第一指穴管の内径を狭めて独特の鋭い音色を作り出しています。従来の工法では、この部分に「喉」と呼ばれる別材を挿入して内径を狭めているのですが、この能管には喉の痕跡は認められませんでした。従来とは異なる工法の存在が判明したのです。龍笛の破損を修理する過程で、内径の狭い能管が派生したという説を提唱する研究者もいますが、その説を修正する必要がでてきたことになります。

韓国国立文化財研究所芸能民俗研究室との「無形文化遺産の保護に関する日韓研究交流」合意書の締結

日韓研究交流合意書を交わすキム韓文研芸能民俗研究室長(右)と宮田東文研無形文化遺産部長(左)

 この合意書は、2005年に締結された「日本国独立行政法人文化財研究所・大韓民国国立文化財研究所研究交流協約書」に基づいて、東文研の無形文化遺産部と韓文研の芸能民俗研究室との間で、無形文化遺産分野での研究交流について具体的に定めたもので、去る6月3日に韓国の文化財研究所において署名締結されました。今後はこの合意書にしたがって、研究員の相互訪問・研修等を行い、今後の共同研究の実現に向けての協議を行うとともに、それらの成果を2010年度末に共同論文集として刊行することが決められました。

第30回国際研究集会「無形文化遺産の保護」報告書の英語版

グウェン・キム・ズン氏「近年のベトナムにおける無形文化遺産の保護」より

 2007年2月14から16日まで開催された第30回国際研究集会「無形文化遺産の保護 国際的協力と日本の役割」の報告書の英語版を、ホームページにアップしました。「無形文化遺産の保護に関する条約」が2006年4月に発効したことを受けて行われたシンポジウムです。ご覧になりたい方は、
http://www.tobunken.go.jp/~geino/e/kokusai/06ICHsympo.html
まで。  なお、日本語版は
http://www.tobunken.go.jp/~geino/kokusai/06ICHsympo.html
でご覧になれます。

梅村豊撮影歌舞伎写真の整理

 梅村豊(1923・6・15―2007・6・5)氏は、雑誌『演劇界』のグラビア頁を長く担当されていた写真家です。昨年12月、無形文化遺産部は、故人の遺されたネガや写真の一部を、未亡人にあたられる宣子氏からご寄贈いただくことになりました。現在、凡その点数を把握するための整理をしています。今年度中には、正式に東京文化財研究所への寄贈手続きを完了したいと考えています。
 故人の写真が最初に『演劇界』に掲載されたのは昭和22年だったそうです。ご寄贈いただいたネガ・写真は、昭和37年頃に撮影されたものが最も古いようですが、それでも研究所に搬入する時点で、ダンボール箱で10数個に上る膨大なものでした。20世紀後半の歌舞伎を撮り続けてきた写真家の貴重な記録です。

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SPレコード鑑賞会開催

SPレコード鑑賞会の様子

 3月28日、SPレコード公開鑑賞会を無形文化遺産部研究室で開催しました。無形文化遺産部は、芸能部時代から伝統芸能に関する音源を収集してきましたが、そのなかには、現在では希少価値となった多くのSPレコードも含まれています。大正時代から昭和初期にかけて録音されたSPレコードを一般の愛好者に公開し、伝統芸能の継承に関して、あるべき継承の姿をレコードを通して考える場としたい、という意図のもとに、能狂言に対象を絞って鑑賞会を行いました。会場の都合で参加者を限定しましたが、当日は21名が参加し、かつての謡の表現の多様性にみな感慨を深くしていました。

『緑林五漢録』完結

一龍斎貞水師による講談

 東京文化財研究所では、平成14年から講談の実演記録を実施しています。ご協力いただいているのは、一龍斎貞水師と宝井馬琴師のお二人です。
 重要無形文化財「講談」保持者の貞水師には、時代物と世話物、二席の連続長講をお願いしていますが、世話物の『緑林五漢録』が、平成20年2月13日、貞水師としては第21回目となる実演記録をもって、遂に完結の運びとなりました。第1回目が平成14年6月11日ですから、足掛けで7年を費やしたことになります。
 緑林(みどりのはやし)とは盗賊のことです。『緑林五漢録』は、五人の義賊が次々に登場しては、刑場の露と消えてゆくまでを描いた長大な物語です。
 時代物は『天明七星談』(平成17年12月26日完結)に続き、現在は『仙石騒動』を口演していただいています。来年度からは新たな長編の世話物が始まる予定です。

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ACCU無形文化遺産保護パートナーシッププログラム 無形文化遺産保護のための集団研修

 この集団研修は、文化庁及びユネスコアジア文化センター主催で、アジア諸国から無形文化遺産保護に関わる行政官を招き、1月21日から26日に行われました。東京文化財研究所は共催機関としてその企画段階から参画し、研修の実施に当たっても、無形文化遺産部の宮田が講師として参加し、「日本における無形文化遺産の保護及び目録作成のメカニズムについて」「東京文化財研究所の無形文化遺産活動について」の2テーマについて、講義を行いました。参加者からは、日本の制度はもちろん当研究所の活動についても多くの質問が寄せられ、その関心の高さがうかがわれました。

第2回無形文化遺産部公開学術講座「上方寄席囃子 林家トミの記録」

講演の様子

 無形文化遺産部主催の公開学術講座が、2007年12月12日、大阪の国立文楽劇場小ホールで開催されました。 開催地の大阪に相応しい題材をということで、昭和37年(1962)に記録作成等の措置を講ずべき無形文化財「上方寄席下座音楽」の関係技芸者に指名された林家トミ師(1883-1970)を取り上げました。当日のプログラムの詳細は、東京文化財研究所ホームページ
http://www.tobunken.go.jp/ich/public/lectures)をご覧下さい。
 公開学術講座は旧芸能部時代から通算すると38回目となりますが、会場が東京以外となったのは今回が初めてです。今後も各地での開催を積極的に計画して行きたいと考えています。

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第2回無形民俗文化財研究協議会

会議の様子

 東京文化財研究所芸能部では昨年度より、無形の民俗文化財の保護と継承に関わる諸問題について話し合う研究協議会を開催しております。その第2回を、「市町村合併と無形民俗文化財の保護」をテーマとして、2007年12月7日に当研究所セミナー室において開催しました。様々な文化財の中でも、地域のなかで伝承され、保護が図られる民俗文化財は、合併の影響をとくに大きく受ける分野です。当日は、近年合併を経験した市町村、およびこれまでに合併を経験しながらそれを無形民俗文化財の保護に活かしてきた市町村から、保存会活動の組織化や学校教育との連携などについて報告があり、それをもとに総合討議がなされました。この協議会の内容は、2008年3月に報告書として刊行される予定です。

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人形浄瑠璃文楽の囃子に関する聞取り調査

 無形文化遺産部では、プロジェクト研究「無形文化財の保存・活用に関する調査研究」の一環として、11月12日に国立文楽劇場(大阪)楽屋で、昭和38年以降、文楽の囃子を引受けてきた望月太明藏(もちづきたぬぞう)社中の、藤舎秀左久(とうしゃしゅうさく)師と望月太明吉(もちづきたぬきち)師の聞取り調査をおこないました。秀左久師は主として笛を、太明吉氏は笛以外の鳴物を担当される社中のベテランで、文楽を陰で支える重要な役割を担いながら、これまであまり注目されていなかった囃子について、その移り変わり、修業のありさまなど興味深いお話を、公演中のお忙しい中にも関わらず、丁寧にしていただきました。

第49回近畿・東海・北陸ブロック民俗芸能大会調査

「伊勢太神楽」(三重県桑名市)

 去る10月28日に和歌山県上富田町の上富田文化会館に於いて開催された上記大会を調査しました。無形文化遺産部無形民俗文化財研究室では、毎年全国各地で開催される民俗芸能大会の調査を継続的に行っており、今回もその一環として実施しました。今年度から近畿・東海・北陸ブロック民俗芸能大会はその運営方法を大きく見直し、ブロック内各府県が隔年で出演する形となり、6県から8団体が出演しました。新しい方式の初年度とあって、その運営が注目されましたが、会場は終始超満員で盛り上がり、演技時間も昨年までと比べ比較的十分確保されるなど、成功裏に実施されたことが確認できました。

伝統楽器情報検索のデータを大幅更新

 今年5月に、ホームページ上で伝統楽器情報検索を開始しましたが、データを2倍にふやしてリニューアルしました。元になったデータベースは、平成13年より行った伝統楽器のアンケート調査ですが、都道府県市町村の教育委員会からの回答に加えて、今回アップしたのは全国の博物館から寄せられた回答分です。従来は文化財に指定された楽器を中心としていましたが、博物館のデータが加わったことで、各地の博物館が所蔵する名器や珍しい楽器が検索できるようになりました。検索項目や方法は以前と同じですが、三味線、箏、鼓など、いわゆる楽器らしい楽器のデータがぐっとふえて、検索の楽しみがいっそう増しました。

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