「ミャンマーにおける考古・建築遺産の調査・保護に関する技術移転を目的とした拠点交流事業」(建築分野)による現地派遣(その1)-材料試験および構造挙動モニタリング調査の実施

採取した煉瓦試料の加工作業
変形測定のためのターゲット設置作業

 2016年8月24日に発生したチャウ(Chauk)地震(M6.8)により、ミャンマーのバガン遺跡群では主に11~13世紀に建てられた煉瓦造建造物に甚大な被害が生じました。東京文化財研究所では同年9月と10~11月の2次にわたり、歴史的建造物の保存・修復に係る様々な分野の専門家8名を現地に急派して文化遺産の被災状況を把握するとともに破損の要因とメカニズムについて考察し、その結果を2017年3月に「ミャンマー・バガン遺跡群における地震被害に関する調査」事業報告書として刊行しました。
 今年度は、引き続き、被災した文化遺産建造物に対する適切な保存・修復対策を検討すると同時に現地当局が目下実施中の修復事業の質的向上に向けた情報提供や技術的助言を行うことを目的として、文化庁委託「文化遺産国際協力拠点交流事業」による標記支援事業(奈良文化財研究所からの再委託)を実施しています。その第一回目の現地調査として、2017年5月17日から25日にかけて3名の専門家を派遣し、材料組成や力学的強度等に関する実験を行うための煉瓦試料を採取したほか、構造挙動モニタリング調査を開始しました。
 煉瓦の試料は、建物の種別や建築年代、使用部位、材寸等を考慮しつつ6棟の被災建造物から破損した部材片計24点を採取し、現地で試験体の形状に加工しました。同時にミャンマー国内での材料試験の実施に向けてMyanmar Engineering Society(MES)関係者との協議及び実験施設見学を行いました。
 一方、構造挙動モニタリングに関しては、前年度調査で明らかにした典型的な亀裂と変形のパターンがみられる3棟の建造物(祠堂2棟、仏塔1基)を対象に、クラックゲージや変形の測点となるターゲットを設置し、初期値を計測しました。今後、破損や変形の進行を継続的に把握することで、危険度の判定はもとより、文化遺産建造物の保存・修復に向けた維持管理計画の策定に有益なデータの蓄積が期待されます。

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