国際研修「紙の保存と修復」2015の開催

修復実習風景

 8月31日から9月18日の日程で、国際研修「紙の保存と修復」を開催しました。本研修は1992年から現在まで20年以上にわたり東京文化財研究所とイクロムとの共催で行われてきました。この研修では、日本の紙文化財の保存と修復に関する技術や知識を伝え、各国の文化財保存に役立てていただくことを目的としています。今年は世界各国より87名の応募があり、その中からオーストラリア、ベルギー、ルーマニア、ブラジル、スリランカ、オーストリア、アイルランド、ロシア、オランダ、アメリカから1名ずつ計10名の文化財修復関係者を招きました。
 講義では、日本の文化財修復の概要、修復材料の基礎科学、美術史的観点から見た紙文化財、道具の製造と取扱いに関する内容を取り上げました。また実習では、紙文化財の修復から巻子の仕立てまでを実施し、和綴じ冊子の作製も行いました。さらに日本の文化財の代表的な形態である屏風と掛軸の構造について学び、その取扱い方法の実習を行いました。所外の研修では、台風の影響により一部予定の変更はありましたが、主たる研修地である美濃市および京都市での研修は無事実施することができました。美濃市では手漉き和紙の製作工程、原料、歴史的背景などについて学び、京都では伝統的な修復工房や道具・材料店等を訪問しました。最終日には研修の総括としてディスカッションを行い、各国における和紙の利用状況等に関する情報交換が交わされました。
 この研修を通して、日本の技術や考え方が海外の文化財修復現場において一助となることが期待されます。

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