メラニー・トレーデ氏講演会の開催

ディスカッションの様子

 日本の美術品が欧米でも所蔵され、高い評価を得ていることはよく知られていますが、日本美術史の研究もまた海外の専門家によって活発に行われています。そうした研究拠点のひとつであるドイツ、ハイデルベルク大学教授のメラニー・トレーデ氏をお招きし、3月5日に当研究所セミナー室にて「『文化的記憶』としての八幡縁起の絵画化―その古為今用」と題して講演会を行いました。
 「文化的記憶」とは、ある作品から多くの人々が想起し、共有する政治的・社会的・宗教的な背景のことです。日本美術史をご専門とするトレーデ氏ですが、欧米における他分野の研究も広く援用しながら、中世の絵巻から近代の紙幣までも視野に入れて八幡縁起の政治性を検証する内容は大変刺激的なものでした。
 講演は高松麻里氏(明治大学非常勤講師)の逐次通訳で二時間余り行われ、引き続いて津田徹英(企画情報部)の司会で、土屋貴裕氏(東京国立博物館研究員)・塩谷純(企画情報部)をコメンテーターとしてディスカッションを行いました。会場からは歴史学や国文学の研究者からの積極的な発言もあり、八幡縁起をテーマに、時代や分野といった専門領域を越えて意見を交換する貴重な機会となりました。

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