聖徳記念絵画館壁画完成式 

記事番号:00036
年月:1936年04月

明治神宮外苑聖徳記念絵画館の、明治天皇の御一代記を永久に伝へる壁画は、日本画洋画各四十枚合計八十枚の中、既に七十五枚は昨年迄に奉納され、大阪行幸諸藩軍艦御覧(岡田三郎助)、東京帝国大学行幸(藤島武二)、憲法発布式(和田英作)、神宮親謁(松岡映丘)、内国勧業博覧会行幸啓(結城素明)の五図を残すのみであつたが、是等諸家の努力に依つて漸く完成を見たので、四月二十一日明治神宮奉賛会総裁閑院宮載仁親王殿下台臨の下に、同館に於て厳かな完成式が挙げられた。 午後一時三十分殿下には奉賛会会長徳川家達公以下役員、奉納者、揮毫者の奉迎裡に御着、奉賛会役員の外、奉納者総代、揮毫者総代に賜謁あつて後親しく壁画を御巡覧遊ばされた。午後二時三十分中央ホールの式場に台臨、役員、奉納者揮毫者参列して式が挙げられ、左の令旨を賜はり、壁画揮毫者総代藤島武二に御目録を下賜、壁画奉納者を代表して徳川圀順公、揮毫者を代表して和田英作の奉答あり、徳川会長の挨拶で式を終つた。次で同館階下西側広間で参列者一同に賜餐あり、総裁宮殿下には午後三時二十分御帰還遊ばされた。 「令旨 明治神宮外苑聖徳記念絵画館ノ壁画完成ヲ告ケ本日茲ニ其ノ丹精ヲ尽シ精巧ヲ極メタル跡ヲ覧ルハ予ノ殊ニ満足スル所ナリ惟フニ壁画ノ事企テラレシヨリ既ニ十有余年ヲ経タリ其ノ間ニ於ケル画家苦心想察スルニ余アリ今ヨリ以往此館ニ出入スル者必スヤ髣髴トシテ明治盛世ノ事跡ヲ回顧シ祭神ノ御遺徳ヲ仰慕シ以テ益々報効ノ念ヲ固クスヘキヲ疑ハス而シテ四壁ノ絵画亦千歳ニ亙リテ不朽ナルヲ得ン一言以テ感喜ノ意を表シ併セテ深ク奉納者諸子ノ志ヲ多トス 昭和十一年四月二十一日」 聖徳記念絵画館は明治神宮奉賛会の主要なる一事業として計画せられ、絵画の作製に就ては大正五年絵画館委員及同顧問を嘱託して先ず画題の選定に着手、慎重な審議に六年余を費し同十一年六月に八十題を決定、同十二年絵画委員会の外 日本画家洋画家各六名より成る壁画調製委員会成立、揮毫者の選定其の他の審議に当り、爾来七十六名の担当画家を決定夫々執筆に従事してから十二年を経て全部の完成を見たものである。揮毫者の中業半にして物故し、後継者又は他の画家に完成を譲つたもの、児島寅次郎、平福百穂、小堀鞆音、葛谷竜岬、吉川霊華、石橋和訓、長原孝太郎の七名を数へ、完成後故人となつた画家も数名に及ぶ。画題、揮毫者及奉納者は左の通りである。 揮毫者 奉納者 一、御降誕 高橋秋華 侯爵中山輔親 二、御深曾木 北野恒富 男爵鴻池善右衛門 三、立親王宣下 橋元永邦 三菱合資会社 四、践祚 川崎小虎 侯爵池田宣政 五、大政奉還 邨田丹陵 侯爵徳川慶光 六、王政復古 島田墨仙 侯爵松平康荘 七、伏見鳥羽戦 松林桂月 侯爵毛利元昭 八、御元服 伊東紅雲 侯爵近衛文麿 九、二条城太政官代行幸 小堀鞆音 男爵三井八郎右衛門 一〇、大総督熾仁親王京都進発 高取稚成 侯爵蜂須賀正韶 一一、各国公使召見 広島晃甫 侯爵伊達宗彰 一二、五箇条御誓文 乾南陽 侯爵山内豊景 一三、江戸開城談判 結城素明 侯爵西郷吉之助/伯爵勝精 一四、大阪行幸諸藩軍艦御覧 岡田三郎助 侯爵鍋島直映 一五、即位礼 猪飼嘯谷 京都市 一六、農民収穫御覧 森村宜稲 侯爵徳川義親 一七、東京御著輦 小堀鞆音 東京市 一八、皇后冊立 菅楯彦 大阪市 一九、神宮親謁 松岡映丘 侯爵池田仲博 二〇、廃藩置県 小堀鞆音 侯爵酒井忠正 二一、岩倉大使欧米派遣 山口蓮春 横浜市 二二、大嘗祭 前田青邨 伯爵亀井茲常 二三、中国西国巡幸長崎御入港 山本森之助 長崎市 二四、中国西国巡幸鹿児島著御 山内多門 鹿児島市 二五、京浜鉄道開業式行幸 小村大雲 鉄道省 二六、琉球藩設置 山田真山 首里市 二七、習志野之原演習行幸 小山栄達 侯爵西郷従徳 二八、富岡製糸場行啓 荒井寛方 大日本蚕糸会 二九、御練兵 町田曲江 十五銀行 三〇、侍講進講 堂本印象 台湾銀行 三一、徳川邸行幸 木村武山 公爵徳川圀順 三二、皇后宮田植御覧 近藤樵仙 公爵一条実孝 三三、地方官会議臨御 磯田長秋 公爵木戸幸一 三四、女子師範学校行啓 矢沢弦月 桜蔭会 三五、奥羽巡幸馬匹御覧 根上富治 日本勧業銀行 三六、畝傍陵親謁 吉田秋光 男爵住友吉左衛門 三七、西南役熊本籠城 近藤樵仙 侯爵細川護立 三八、内国勧業博覧会行幸啓 結城素明 侯爵大久保利和 三九、能楽御覧 木島桜谷 男爵藤田平太郎 四〇、初雁の御歌 鏑木清方 明治神宮奉賛会 四一、グラント将軍と御対話 大久保作次郎 子爵渋沢栄一 四二、北海道巡幸屯田兵御覧 高村真夫 北海道庁 四三、山形秋田巡幸鉱山御覧 五味清吉 男爵古河虎之助 四四、兌換制度御治定 松岡寿 日本銀行 四五、軍人勅諭下賜 寺崎武男 公爵山県伊三郎 四六、条約改正会議 上野広一 侯爵井上勝之助 四七、岩倉邸行幸 北蓮蔵 東京商業会議所 四八、華族女学校行啓 跡見泰 常盤会 四九、東京慈恵病院行啓 満谷国四郎 東京慈恵会 五〇、枢密院憲法会議 五姓田芳柳 公爵伊藤博邦 五一、憲法発布式 和田英作 公爵島津忠重 五二、憲法発布観兵式行幸啓 片多徳郎 日本興業銀行 五三、歌御会始 山下新太郎 宮内省 五四、陸海軍大演習御統監 長原孝太郎 名古屋市 五五、教育勅語下賜 安宅安五郎 茗渓会 五六、帝国議会開院式臨御 小杉未醒 貴族院、衆議院 五七、大婚二十五年祝典 長谷川昇 華族会館 五八、日清役平壌戦 金山平三 神戸市 五九、日清役黄海海戦 太田喜二郎 大阪商船株式会社 六〇、広島大本営軍務親裁 南薫造 侯爵浅野長勲 六一、広島予備病院行啓 石井柏亭 日本医学会/日本医師会 六二、下関講和談判 永井秀太 下関市 六三、台湾鎮定 石川寅治 台湾総督府 六四、靖国神社行幸 清水良雄 第一銀行 六五、振天府 川村清雄 公爵徳川家達 六六、日英同盟 山本鼎 朝鮮銀行 六七、赤十字社総会行啓 湯浅一郎 日本赤十字社 六八、対露宣戦御前会議 吉田苞 公爵松方巌 六九、日露役旅順開城 荒井陸雄 関東庁 七〇、日露役奉天戦 鹿子木孟郎 南満洲鉄道株式会社 七一、日露役日本海海戦 中村不折 日本郵船株式会社 七二、ポーツマス講和談判 白滝幾之助 横浜正金銀行 七三、凱旋観艦式 東条鉦太郎 海軍省 七四、凱旋観兵式 小林万吾 陸軍省 七五、樺太国境劃定 安田稔 日本石油株式会社 七六、観菊会 中沢弘光 侯爵徳川頼貞 七七、日韓合邦 辻永 朝鮮各道 七八、東京帝国大学行幸 藤島武二 侯爵前田利為 七九、不予 田辺至 東京府 八〇、大葬 和田三造 明治神宮奉賛会

登録日: 2014年04月11日
更新日: 2020年12月11日 (更新履歴)
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